Avid S6導入事例 #28 :株式会社NHKテクノロジーズ

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高度な技術力で、日本の公共メディア NHKを支えるNHKグループ唯一の総合技術会社、株式会社NHKテクノロジーズ(東京・渋谷)。2019年4月、株式会社NHKメディア テクノロジーと株式会社NHKアイテックが統合する形で設立された同社は、番組制作やコンテンツ送出はもちろんのこと、情報システムの維持管理や送受信、設備整備に関する技術など、放送に関わる技術業務をほぼすべて手がけています。2018年12月の新4K/8K衛星放送開始後は、NHKグループでタッグを組み、紅白歌合戦やNHK杯フィギュアスケート、ラグビーワールドカップなど、多くのコンテンツで4K/8Kパブリック・ビューイングを展開。その卓越した技術力を活かして、4K/8Kコンテンツの推進/普及に注力しています。

 

そんな同社は先頃、東京・富ヶ谷の“テクノビル”内に設けられたMA室、『MA-601』を全面リニューアルしました。今回のリニューアルについて、株式会社NHKテクノロジーズ メディア技術本部 番組技術センター ビジネス開発部副部長の黒沼和正氏は、制作するコンテンツの変化がきっかけの一つになったと語ります。

「『MA-601』で行う業務は、これまではハイビジョンの3Dコンテンツ制作やDVD制作が中心だったのですが、最近はNHKの柱である番組制作を支える方向に変わっていきました。その結果『MA-601』は、音響設計の良さから音楽番組の制作で使われるようになっていったんです。音楽番組の制作は、TDとMAはそれぞれ専用のスタジオで、別の担当者が手がけるのが一般的ですが、弊社では収録担当者がTDからMAまでを一つのスタジオで行っています。これまでは収録担当者がTDからMAまでを手がけるという特殊なスタイルを、弊社スタッフの高い技術力でカバーしてきたわけですが、そのような仕事が増えているのであれば、作業内容に合わせて最適な環境を整えた方がいいのではないかと。そうすることで、手がけるコンテンツのクオリティーもさらに引き上げることができるのではないかと考え、2017年12月に『MA-601』のリニューアル・プロジェクトをスタートさせました」(黒沼氏)

株式会社NHKテクノロジーズの『MA-601』(東京・富ヶ谷)

株式会社NHKテクノロジーズ メディア技術本部 番組技術センター 音声部副部長の青山真之氏は、“優れたTDができるMAスタジオ”が今回のリニューアルの一番のコンセプトだったと語ります。

「『MA-601』は音の良いとてもしっかりしたスタジオであったのですが、基本的にはフル・デジタルのMAスタジオであり、音楽のTDを想定した造りになっているわけではありませんでした。最近手がけている音楽番組では、一流のミュージシャンやアレンジャーさんと一緒に仕事をするわけですが、そういった方から、“一度外に出して、アナログのエッセンスを加えられないか”と言われることもあったんです。アナログ・コンソールがあるNHKのスタジオならば、そういった要望にも応えられるのですが、フル・デジタルの『MA-601』ではそういったレコーディング・スタジオのような作業が難しかった。なので今回のリニューアルでは、MAスタジオでありながら優れたTDも行える、これまでにないスタジオを目指したんです」(青山氏)

 

そして新生『MA-601』の核となる機材として導入されたのが、S6とAPIのアナログ・コンソールを組み合わせたハイブリッド型のコンソールです。S6とAPIのアナログ・コンソールはシームレスに連結され、ラウドネス・メーターをはじめとする周辺機材と共に特注のデスク内に違和感なく収納されています。

「スタジオのリニューアル・プロジェクトがスタートしてから、海外のスタジオを研究し始めたのですが、コントロール・サーフェースとアナログ・コンソールを組み合わせて使用しているスタジオを多く見かけたんです。アナログのエッセンスが欲しいとは言っても、作業の中心となるのはPro Toolsなわけですから、キーボードやトラックボールはやはり中心に置きたい。その上で、必要に応じてアナログ・コンソールでの作業も可能にするならば、このスタイルが一番理にかなっているのではないかと思いました。コントロール・サーフェースとアナログ・コンソールを組み合わせるというアイディアは、かなり最初の時点でありましたね」(青山氏)

『MA-601』に導入されたS6。24フェーダー/5ノブ仕様

『MA-601』のS6は、24フェーダー/5ノブ/ディスプレイ・モジュールは1面という構成で、マスター・モジュールを左に配したレイアウトが採用されました。作業の中心となるPro Toolsは、カード3枚仕様のHDXシステムがメインとサブで2台用意され、またアナ・ブース内のプリプロ・スペースにもHD Nativeシステムが設置されています。株式会社NHKテクノロジーズ メディア技術本部 番組技術センター 音声部の山口朗史氏は、今回Pro Toolsのディスプレイを正面に設置することに最もこだわったと語ります。

「前のコンソールのときは、Pro Toolsのディスプレイが可動式サイド・テーブルの上にあったので、横を向いて作業しなければならなかったんです。それを改善したかったので、今回はPro Toolsのディスプレイを正面に設置し、通常3面あるディスプレイ・モジュールは1面という構成にしました」(山口氏)

 

 

コンソールに向かって左手奥にある広大なマシン・ルーム

ハイブリッド・コンソールと共に、新生『MA-601』の肝となる機材が合計4台導入されたPro Tools | MTRXです。Pro Tools | MTRXは、最大2台のPro ToolsをDigiLink接続できるのが特徴ですが、『MA-601』ではあえてDigiLinkでは接続せず、合計4台のPro Tools | HD MADIを介してMADI接続で使用されています。

「DigiLinkで接続しなかったのは、Pro Tools | MTRXをPro Toolsとは切り分け、S6と組みわせることでコンソールの一部として機能させたかったからです。DADman用に専用のWindows PCも用意し、このPCはPro Tools | MTRXの電源を入れれば自動で起動する設定になっているので、コンピューターを意識することなく、ラージ・コンソールのような感覚でS6を使用できるシステムを構築しました。また4台のPro Tools | MTRXは、それぞれADコンバーター用、DAコンバーター用、ルーター用、モニター用と役割を持たせています。贅沢な使い方ですが、各Pro Tools | MTRXの役割を明確にすることで、ルーティングを分かりやすくしているんです。例えばPro Toolsの1chの出力は、DAコンバーター用Pro Tools | MTRXの1chから、APIのコンソールの1chの入力に立ち上がります。このスタジオは、協力会社のスタッフを含めると、100名くらいが使用する可能性がある。そんなスタジオでマニアックなシステムを組んでしまうと、使う人が混乱してしまうと考え、できるだけ分かりやすいシステムにしたんです」(山口氏)

 

合計4台導入されたPro Tools | MTRX

リニューアル後、様々な業務でフル稼動の状態が続いているという『MA-601』。青山氏は、音質/使用感ともに思い描いていた以上のスタジオができあがったと語ります。

「S6の操作感に関しては、フェーダーの解像度が凄く高いですね。当たり前ですが、Artist Mixとはまるで違うということを改めて認識しました。それと今回、S6とKVMをリンクさせることで、ワン・タッチで2台のPro Tools、Media Composer、DADmanのコンピューターを切り替えられるシステムを組んだのですが、それが大変便利です。また、これも今回こだわった部分ですが、スピーカーセレクトを6系統用意し、S6のボタンで切り替えられるようにすることで凄く使いやすくなりました。このあたりのカスタマイズ能力は凄いですね。Pro Tools | MTRXも何も言うことがないくらい素晴らしいサウンドで、皆が口を揃えて“本当に音が良いね”と言っています」(青山氏)

 

「音楽のTDとMA、システム的にどちらかに振れてしまっていると、一方から不満の声が上がるのではないかと心配していたのですが、運用後にそういった意見は聞こえてきませんし、上手く両立することができたのではないかと思っています。それと今回、凄いなと感じているのは、システムの安定性です。スタジオをリニューアルした後は、半年くらいはバタバタするのが常ですが、今回は本当にトラブルが起きない。小さなトラブルがあったとしても、それらはシステム習熟の過程で起こる人的要因であることがほとんどでした。今回は国内初導入の機材も多く、初めてのチェレンジでもあったので、管理する側としては不安要素が多かったのですが、安定して運用できているのでほっと胸を撫で下ろしているところです」(黒沼氏)

写真向かって右から、新システムのプランニングを担当したROCK ON PROの君塚隆志氏、株式会社NHKテクノロジーズ メディア技術本部 番組技術センター 音声部副部長の青山真之氏、同社メディア技術本部 番組技術センター ビジネス開発部副部長の黒沼和正氏、同社 メディア技術本部 番組技術センター 音声部の山口朗史氏、ROCK ON PROの赤尾真由美氏

株式会社NHKテクノロジーズ
(NHK Technologies, Inc.)

https://www.nhk-tech.co.jp/

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Avid S6

S6は、モジュール式設計であり、構成されたシステムを選択するか、または独自のシステムを構築することが可能です。