Avid S6導入事例 #31: 東映デジタルセンター

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東映グループが2010年に設立した東映デジタルセンター(東京・練馬)。東映東京撮影所の敷地内に開設された同センターは、熟練のスタッフと最新の設備を擁した国内屈指のポストプロダクション・ファシリティであり、サウンド関連のスタジオは、ダビングステージが2部屋、ADRルームが3部屋(うち1部屋はフォーリー収録にも対応)、MAルームが3部屋、複数のサウンド編集室を完備。フラッグシップとなるダビングステージ『Dub1』は、日本で初めてDolby Atmosに対応したスタジオとして知られ、72フェーダーのSystem 5 Hybridと5式のPro Tools | HDXを組み合わせた大規模なシステムが稼働しています。

東映デジタルセンター(東京・練馬)のダビングステージ『Dub2』

劇場作品はもちろんのこと、テレビ放送作品のファイナル・ダビングでも使用される

そんな東映デジタルセンターでは設立10年を迎え、順次各設備のリニューアルを実施。その第一段となったのが、劇場作品とテレビ放送作品の両方で使用されるダビングステージ『Dub2』である。約18年使用したというDSPコンソールをAvid S6に入れ替え、完全なPro Toolsミックスのスタジオにリニューアルしました。東映デジタルセンター ポスプロ事業部のサウンド・エンジニアである畠山宗之氏は、映画スタジオのワークフローも世界的に変わりつつあると語ります。

 

「今回『Dub2』をリニューアルするにあたり、DSPコンソールを最新のものに更新するか、コントロール・サーフェースのS6を導入するかの二択だったのですが、これからの時代のワークフローを考えると、コントロール・サーフェースでもいいのかなと判断しました。私自身、DSPコンソールでEQやダイナミクスを触るということをしてきたので、コントロール・サーフェースだけで大規模な作品のミックスをするのはどうなのだろうと思っていたのですが、ハリウッドに目を向けるとS6でのミックスが広がりつつある。Sony PicturesのスタジオにはS6が2台入っていますし、インディペンデントの映画スタジオもほとんどS6になっているという話です。隣りの『Dub1』のSystem 5はハイブリッド仕様なので、DSPミックスとPro Toolsミックスの両方に対応できるのですが、エンジニアさんの作業を見ていると、最近は4割くらいがハイブリッド・ミックスなっています。特に若い人はPro Toolsミックスに対する抵抗感がないように見えますし、これからもっとその方向に進んでいくのではないかと思います。ただ、ベテランのリレコーディング・ミキサーはDSPコンソールでのミックスを好まれることも多いので、ハリウッドのメジャー・スタジオはどちらのスタイルにも対応できるところが多いようです」(畠山氏)

『Dub2』に導入されたS6。56フェーダー/5ノブ/12フレームというコンフィギュレーション

『Dub2』に導入されたS6は、56フェーダー/5ノブ/12フレームという仕様。Pro Toolsのモニター・ディスプレイやキーボードを中心に配したレイアウトが採用されることが多いS6ですが、映画のダビングステージということもあり、『Dub2』ではモニター・ディスプレイやキーボードは端に寄せたフェーダー中心のレイアウトを採用。マスター・メーターを常時監視するため、フェーダーが無いフレームにディスプレイ・モジュールが搭載されているのも特徴です。

 

「フェーダー数に関しては、以前使用していたDSPコンソールの仕様を踏襲しました。両脇のデスクなどはそのまま使い続けようと考えていたので、全体のサイズも基本的には同じです。ノブ数に関しては、多ければ多いほど便利なのでしょうが、とりあえず5ノブで十分かなと。5ノブでもパラメーターを展開して使うことができますからね。映画のダビング・ステージは、作品ごとにエンジニアさんが作業しやすい環境を作らなければなりません。中央にプロデューサー・デスクを置いて、“ここで作業してください”というわけにはいかないので、このようなフェーダー中心のレイアウトにしました。もちろん、スクリプト・トレイを使用すれば、中央にモニター・ディスプレイやキーボードを置くことも可能です。ディスプレイ・モジュールを追加したのは、各ステムとマスター・レベルの監視はしっかり行いたいですし、エンジニアさんもそれを望まれる方が多いからです。専用のメーターを用意することなく、マスター・メーターを確認できるのはとてもありがたいです」(畠山氏)

Pro Toolsは、カード2枚のHDXシステムがプレーヤー用に4台(ダイアログ用、音楽用、効果用×2)、レコーダー用に1台稼働

S6でオペレーションされるPro Toolsは、カード2枚のHDXシステムをプレーヤー用に4台(ダイアログ用、音楽用、効果用×2)、レコーダー用に1台用意し、Satellite Linkで同期。映像は専用のコンピューターを用意し、Media Composerで再生する構成となっています。オーディオ・インターフェースは、プレーヤー用Pro ToolsはHD MADI、レコーダー用Pro ToolsはPro Tools | MTRXを接続。Pro Tools | MTRXには、デュアルMADI I/Oカードが2枚、ADカードが2枚、DAカードが4枚装着され、4台のプレーヤー用Pro Toolsから合計256chの信号がMADIで入力されています。

 

「Pro Toolsの台数は以前と同じですが、今回から完全にPro Toolsミックスになるので、すべてカード2枚のシステムに増強しました。Pro Tools | MTRXにADカードを装着しているのは、ここでちょっとした録音を行うこともあるからで、衣摺れなど足りない音をすぐにマイクを立てて録れるようになっています。また自分のエフェクターを持ち込まれる方もいらっしゃるので、AD/DAは完全に無しにはできませんね。音楽用Pro Toolsに関しても、アナログで出力できるようにHD I/Oを接続してあります」(畠山氏)

 

今回新たに導入されたPro Tools | MTRX。レコーダー用のPro Toolsに接続されている

Pro Tools | MTRXの出力は、今回新たに導入されたDSPプロセッサーのLake LM26に7.1chデジタルで接続。モニターは専用機ではなく、Pro Tools | MTRXとDADmanの組み合わせでコントロールされています。

 

「導入前にタックシステムさんとは何度も意見交換して、最終的にPro Tools | MTRXとDADmanの組み合わせが最適だろうということになりました。できるだけシンプルなシステムにしたかったんです」(畠山氏)

工事完了後、直ちにダビング作業で使用したという『Dub2』。畠山氏は、S6の直感的な操作性とPro Tools | MTRXのピュアな音質に非常に満足していると語ります。

 

「S6に関しては、Pro Toolsの様々な機能をダイレクトに操作することができるので、とても使いやすいですね。コントロール・サーフェースでのミックスに関しては、DSPコンソールの時代に既にPro ToolsでカテゴリーごとにAUXマスターを作るというワークフローが出来上がっていたので、あとはS6のフェーダーに立ち上げてバランスを取ればいい。先日も某映画のトレーラーをミックスしたのですが、DSPコンソールと同じような感覚で作業することができました。異なるPro Toolsのチャンネルを1本単位でフェーダーに並べることできるので、快適に操作することができています。音に関しては、Pro Tools | MTRXとLM26の組み合わせによって、かなり変わった印象です。これまでのシステムは、良い意味で音がまとまっていたのですが、音像に広がりが出たというか。単にステレオ・コンテンツを再生しても音が広がった感じがします。サラウンド・スピーカーの解像度も上がり、少し前にサラウンド・スピーカーの調整をしたのですが、ピンク・ノイズの音が明らかに違ってビックリしました。新しいシステムの音の良さは、社内でも大きな話題になっています。これから時間をかけて新しいシステムを使いこなしていきたいですね」(畠山氏)

 

写真向かって左から、東映デジタルセンター ポスプロ事業部の畠山宗之氏、東映株式会社の室薗剛氏、タックシステムの益子友成氏

東映デジタルセンター(TOEI COMPANY,LTD.)
https://www.toei.co.jp/studio/digitalcenter/

Avid S6

S6は、モジュール式設計であり、構成されたシステムを選択するか、または独自のシステムを構築することが可能です。