Brainworx 及びPlugin Alliance製品開発ストーリー

By in オーディオ, ライブサウンド

 

Dirk UlrichはBrainworxのオーナー兼CEOであると同時に、Brainworx、SPL、elysia、Vertigo、Milennia、Mäag Audioなど名だたるメーカーのプラグインをラインナップに擁するPlugin Allianceの設立者でもあります。2016年1月、Plugin Allianceはライブ・サウンド・システムAvid VENUE | S6L用プラグイン・バンドル100% VENUE AAX Bundleをリリース。5月に公開されたV1.1アップデートでは新たに5種類のプラグインが追加されました。

 

今回はDirk氏に、100% Venue AAX Bundleの機能や可能性、ライブ・エンジニアの受ける恩恵などについて会社の沿革や設計理念を交えてお話をうかがいました。

Dirk Ulrich (自身のスタジオにて)

DH: まずは、Dirkさんご自身の経歴を教えていただけますか。

 

DU: 卒業はしていませんが私は学生時代法律を勉強していました。その頃すでに小さなスタジオも運営しており自分の作品や地元のバンドのレコーディングなどを行っていました。90~91年頃のことです。

 

また、それと平行してレバークーゼンにある楽器店でも働き始めていました。その店はマーシャルのアンプをチューニングする店として有名で、ドイツ中のプロ・ミュージシャやバンドが数多く訪れていました。ギターリストだった私にとって、とても刺激的な経験でしたね。そしてその楽器店のオーナーの提案で、移転で広くなる店のスペースに私のスタジオの機材を持込み音楽スクールを始めることになりました。1年程続けているとスタジオ業と音楽スクールがかなり忙しくなり、学業までをこなす時間が無くなってしまいました。

ライブ中のDirk氏(1995年)

そこで私は学校を辞め、ロックンロールに身を捧げることを決意しました。その頃になるとプロのバンドのプロデュースなどもしていましたね。94~95年頃のことになります。それ以降現在まで私は音楽のプロデュース業で生計を立てています。その後私は小さなロック・レーベルを設立し、Warner/Chappellと共同出資でいくつかの作品のプロデュースを行いました。またバンドのプロデュースだけでなく、地元のラジオCMやバイエル・レバークーゼンというサッカー・チームの入場ソングまで、様々な仕事を行いましたね。ドリーム・シアターのジェイムズ・ラブリエや、ハードコア界のレジェンドPro Pain、クラシックの有名なテナー歌手など、様々なミュージシャンのプロデュースを長年に渡り行い、チャート・インした作品も多数あります。プラグインを作り始めたのはあくまで最近のことなんです。それまではずっとロック、メタル、パンクなど、歪んだギターとリアルなドラム・サウンドにどっぷりと漬かる生活を続けてきたんですよ。

 

ハードウェアMS EQ bx_1の元となるアイデアが頭に浮かんだのは2005年頃になります。きっかけはその頃マスタリングで良く使っていたケルンにある大きなスタジオにありました。そのスタジオあったカスタム製MSマトリクス・マスタリング・コンソールでMSテクニックの可能性に衝撃を受けた私は、このマトリクス回路を内蔵するEQを作ってみたいと考えるようになりました。そしてリペア・ショップを営む友人に頼み実際にEQを作ってもらったんです。

レバークーゼンのスタジオで作業を行う、かつてのDirk氏

その時に作った2台のプロトタイプは今でも私のスタジオに残っているんですよ。その時点ではMS EQを販売することなど考えてもいませんでした。自分のスタジオで使うEQが欲しいと思う単なるスタジオ・マンの一人だったわけですから。その後、Creamwareで働く別の友人にMS EQについて相談を持ちかけてみました。

 

「実際に作ると電源やノブ、フィルターなど部品だけで何千ドルもかかりそうだね。とりあえず、うちのSDKで設計してみたらどうだい?」私のアイデアを聞いた友人はこう言いました。当時私も使っていたCreamware のI/Oカードはウェブや雑誌で広告も展開しておりドイツでは比較的有名なDSP I/Oカードでした。

全ての始まりとなったbx_digital MS EQプラグインの現行バージョン(V3)

そのカードはSDKを使うことでオリジナルのプラグインが開発できる機能が備わっていました。入力と出力があるだけの空のプラグインに音響処理のツール・キットを組み込むことでオリジナルのプラグインを作れる開発環境です。ノブやフェーダーなどGUIの類は何も無く、扱えるフィルターはピークとシェルビング・バンドのみでしたが、私は正相信号と逆相信号を組み合わせてMSマトリクス回路を実際に再現してました。

 

5バンドEQやシフターEQ、MSディエッサーなどいくつかのツールを試作するのに何週間もかかりましたが、自分だけのマスタリングEQを作れるようになったことはとてもクールでしたね。そして完成したそれらのプロトタイプを友人に見せたところ彼はとても驚き、これはビジネスになるんじゃないかと言ってきたんです。そこで3Dレンダリングのエキスパートに頼みGUIを実装し、本物のプラグインとして完成したのがbx_digital V1 MS EQです。

Creamware SCOPE DSP およびI/O card

プラグインが完成してまもなく、私達はLAで行われたNAMMショーのCreamwareブースでプラグインのお披露目を行いました。ブースの前を通りかかりbx_digitalを見たDigidesignのMark Papakostasは「ワォ!なんて素晴らしいマスタリング・プラグインなんだ!」と評価してくれました。彼はマスタリングが趣味で、カスタム製アナログMSマトリクス回路を自作していたこともあり私のプラグインをとても気に入ってくれたんです。そして彼と一緒にいた開発部門のEd Grayが「Markさえ良ければ、すぐにでもBrainworxとデベロッパー契約をしたい」と言って来ました。そして私はDigidesignがNAMMショー後の月曜日にヒルトン・ホテルで予定していたデベロッパー・カンファレンスに急遽招待されました。

 

デベロッパー・カンファレンスにはGeorge MassenburgやWavesの連中など錚々たる面子と同席していました。その時まだプラグイン・ビジネスに足を踏み入れてなかった私はとても興奮しましたね。その頃の私は、Creamwareが提供するドラッグ&ドロップ方式のソフトウェアで開発していた状態で、自分のプラグインのコードすら持ってなかったわけですからね。

Dirk Ulrich、George Massenburg、Ed Gray(2005年NAMMにて)

私はオーディオとビジネスのことは多少分かりますがプログラマーではないので、そのミーティングで出た技術的な内容については全く理解できませんでした。でも有り難いことにDigidesignは私の様にほとんど経験の無い若者を、何十年も経験がある熟練開発者と同等に扱ってくれたんです。

 

そしてその席でDigidesign側から、bx_digitalプラグインを次バージョンのPro Tools Massive Packに入れたいとオファーを受けました。まさにこの瞬間に私達のビジネスがスタートしたのです。私はすぐに腕のたつプログラマーをドイツで探し始めました。またTDM版へのポーティングはSoftubeと共同で行うことも決めました。Avidからのロイヤリティが好条件だったため、その資金を元に優秀なプログラマーを雇うことができたんです。Brainworxのソフトウェア・ビジネスはこうしてスタートしました。あの時Digidesignからのオファーが無ければ今のBrainworxは無かったと言えるでしょうね。

 

Brainworxの最初のEQプラグインbx_digitalは幸運なことに成功を収めることができました。しかし今お話した通り、私たちは確固たるビジネス・プランの下にでスタートしたわけでは無かったのです。bx_digitalは今でもBrainworx最大のヒット作であり、また数年前のFuture Music紙”過去10年で最高のプラグイン”を初め数々の受賞も経験しています。

Winter NAMM 2013にて

DH: 素晴らしいストーリーですね。トレード・ショーで人脈を作ることの重要さを再確認しました。その後はどの様にして現在のビジネス・モデルに行き着いたのでしょうか?

 

DU: bx_digitalがヒットを記録したのを受け、私たちはMSテクノロジーの新たな可能性について考え始めました。そして大好きなMSテクノロジーを他の用途に活用できないかと考え、いくつかのプラグインを作りました。プラグイン・チェインに加えることで他のプラグインをMSモードで使うことができるbx_controlというシンプルなプラグインもその一つです。他にはICON社のコンソール内蔵EQとして採用されたbx_hybrid EQや、サラウンド・ジョイスティック用のshifter EQなども開発しました。Avidはプラグインとハードウェア・コントローラーを連携させるのがとても好きなので、shifter EQは特に気に入ってくれましたね。Brainworxブランドの始まりはこんな感じです。そしてここまでが会社としての最初のフェーズと言えるでしょう。

SPL De-esser plug-in

SPL Transient Designer Plus plug-in

第2のフェーズは、楽器屋時代から面識があり当時SPLで働いていた知人に連絡をしたところから始まります。私は彼に「Universal Audioと共同でTransient Designerプラグインを開発したそうですね。SPLにはクールなハードウェア製品が沢山あり、私達Brainworxはプラグインを開発する技術があります。良かったら共同でSPLのハードウェア製品全てをプラグイン化しませんか?」と提案しました。私の提案に興味を持ったSPLのオーナーは、Vitalizer、De-Essers、passive EQなどSPLのクールなハードウェア全製品のプラグイン化に関する独占契約を結んでくれました。

 

これは私達にとって大きなターニング・ポイントになりました。SPLチームと一緒にトレード・ショーに出展することで他のハードウェア・メーカーがBrainworxに興味を示してくれたのです。「SPLの様な信頼できるハードウェア・メーカーと一緒にやってるのであれば、うちもBrainworxにお願いしてみよう。」と話が進んだわけです。そして私達はVertigoやelysiaを含め5~6社とのプラグイン化契約を交わすことになりました。そうして作ったプラグインは当初オリジナルのハードウェア・メーカーのウェブサイトで個別に販売されていたのですが、それらを一箇所にまとめ、アクティベートやデモ版の方式を統一した上で販売することになり誕生したのがPlugin Allianceです。

カーレースにも情熱を注ぐDrik氏

DH: オーソライズの方式について教えて下さい。どんな方式で、なぜそれを採用したのですか?

 

DU: オーソライズ方式の仕様を決定する際に何より重要視したことは、ユーザーの手続きをなるべく簡単にすることでした。セキュリティ・システムにどれだけコストをかけたとしてもクラック版は必ず出て来ますし、何より複雑な手続きはユーザーのために良くありません。違法コピーに対抗する最善策は、価値のある商品をスムーズなオーソライズ方式で提供することだと考えています。つまり盗むより買った方が早いと思って貰えれば良いのです。

 

実際、Plugin Allianceは大きな成功を収めました。開始時点では1万に満たなかったユーザー・アカウント数は、1年も経たないうちに4万を超えるまで成長しました。当初はドングル不要でデモ版を試すことができ、ユーザーはプラグインを自由に組み合わせ、自分だけのバンドルを作ることもできました。その後、セキュリティ保護を含む独自のオーソライズ・システムを開発しましたが、ユーザー体験を第一に考えることはこれからも変わりません。デモ版のアクティベート手順をなるべくシンプルにすることはとても重要です。現在登録ユーザー・アカウントが15万を超えていることからも、お分かりいただけると思います。

妻のMarina 、息子のTimと。

DH: このアクティベーション・スキームはライブ・エンジニアにとっても便利そうですね。

 

DU: その通りです。1ライセンスで3台までアクティベート可能。コンピューターだけでなくUSBメモリーをアクティベートすることもできます。つまり5ドルのUSBメモリーにプラグインとアクティベーション・ファイルをコピーしておけば、現場のコンソールにUSBメモリーを挿すだけで済むのです。

 

現場がネット環境の無い屋外コンサート会場だとしても、USBメモリーがアクティベートされているため、プラグイン・ファイルを現場のPCにコピーするだけで準備は完了です。仕事が終わったらUSBメモリーを抜くだけ。USBメモリー無しでは起動できませんので、プラグイン・ファイルは現場のPCにコピーしたままでも問題ありません。この方式は一見、ライブ・エンジニアにはお馴染みのドングルによるコピー・プロテクションに似ていますが、どこでも買えるUSBメモリーを使うことができ、万が一壊れたり紛失した場合もウェブサイトで申請をすれば新たにアクティベート可能である点でドングルより優れていると言えるでしょう。異常な回数の申請をしない限り再アクティベートは非常にスムーズに行えます。

Englアンプと息子Timを抱えるDirk氏

DH: TDMからAAXへプラットフォームを移した経緯について教えていただけますか?

 

DU: 移行にあたり、AvidはAAXに関するミーティングを1対1でじっくり行う機会を設けてくれました。NAMMかAESの期間中だったと記憶していますが、約90分のミーティングでAAXに関する詳細な情報を説明してくれたんです。AAXが公式に発表されるずっと前の話ですよ。ニュースレターの一斉送信で発表を行い、こちらからサポートに問い合わせしなければならない会社も少なくありませんから、その点Avidはとてもクールな対応をしたと言えますね。

 

また浮動小数点処理に変わったことはAAXのアドバンテージだと思います。これによりフレームワークが劇的にシンプルになりました。AAXネイティブDSPプラグインだけでなくUADプラグインでさえも同じコードベースで開発できるようになったのです。これまで相当数のプラグインを作ってきましたので、全てを移行するまでにかなりの時間を要しましたけどね。実際には1年程度かかりました。

Mäag Audio EQ4 plug-in

DH: 製品ラインナップの中でSPL、elysia、そしてMäagなどのプラグインが実際のハードウェアを再現するコンセプトなのに対し、Brainworxオリジナルのプラグインにはどんなコンセプトで開発しているのですか?

 

DU: 基本的には、こんなハードウェアがあったらと思うものをプラグインとして実現しています。このコンセプトはプラグインの外観からも見て取れるでしょう。iZotopeのプラグインの様な未来的なデザインでは無く、現実のハードウェアを想定したGUIを採用しています。私は今でもロックンロールのプロデューサーですので、ハードウェア風のデザインが好みなんです。

 

また、ハードウェア版bx_digitalの製造にはいまだに至っていません。なぜなら構造がとても複雑なため、相当のコストがかかってしまうからです。一時期コンセプト製品をウェブサイトに載せていたこともあり問い合わせが今でもあるんですよ。実際に何度か見積もってみたこともあるのですが、プラグインと全く同じ機能をハードウェアで再現した場合、販売価格は2万ドルを超えてしまうんです。

Dirl氏のアウトボード・コレクション

 

DH: S6L用のVENUE AAX Plug-in Bundleに話を移させてください。バンドルに含まれるプラグインは、Plugin Allianceの膨大なラインナップの中からどのようにして選んだのですか?

 

DU: S6L用プラグイン・バンドルにどのプラグインを採用しようか話し合っているとき、今や60以上ある私たちのラインナップの中にはSPLやelysia、Maagなど、ライブ・サウンドにフォーカスした製品を作るメーカーが含まれていることに気がつきました。例えばSPL Transient Designerはたった2つのノブで絶大な効果を得ることができます。他にやることが多いサウンド・チェック時などにパーフェクトなツールです。細かい設定がしづらいラウドな現場などでも最適です。またDe-Esserも基本的に処理が自動なので現場向きと言えますね。今回は最初のライブ・バンドル・シリーズということもあり、現場で即戦力になることを第一にチョイスしました。 Mäag EQに搭載されるAirバンドはフィードバック周波数より上の帯域を気持よくブーストすることができます。大きなステージでもフィードバックを気にせず使うことができるEQです。また、 bx_saturator V2SPL TwinTubeなど、他に替えの効かないユニークなツールもバンドルしました。これらのプラグインによるクールなディストーション・サウンドはライブの現場で活用できるはずです。

 

100% VENUE AAX Bundle V1.1に含まれるプラグイン: Brainworx bx_console, bx_digital V3, bx_opto, bx_refinement, bx_saturator V2; elysia mpressor; Mäag Audio EQ4; SPL De-essers, Transient Designer Plus, and TwinTube

Brainworx bx_saturator V2 plug-in

SPL TwinTube plug-in

DH: MS(ミッド-サイド)についてもう少しお話を聞かせてください。特殊なMSマイキング技術を知らないユーザーはどのようにMSプラグインを使えば良いのでしょうか?

 

DU: ご指摘の通り、MSはモノラル互換の信号を録音し特殊な処理を施すことで広がりのあるステレオ信号を得られるテクニックです。私たちはこのMSテクニックを逆転の発想で捉え、2ミックス信号からミッド/サイド信号を生成しています。もちろんオーバーヘッド・マイク、ピアノ、アコースティック・ギターやコーラスなどの処理にも最適です。これまでLRチャンネルにしか施せなかった処理が、MSを使うことでセンター成分とステレオ成分に個別に施せるようになりました。より柔軟性の高い音作りが可能になったのです。

マイキングが全て

例えばステレオ信号のローエンド成分をモノラル化することも簡単です。弊社のMSプラグインの多くには、このモノ・メーカーという機能が搭載されています。例えばモノ・メーカーを120Hzに設定すると、ステレオ信号に含まれる120Hz以上の帯域はそのままに、120Hz以下の成分がモノラル化されます。これはローエンドの位相問題が起きがちな現場でとても使えるテクニックです。サブウーファーとクロスオーバーが設置された巨大なシステムでは特に有効でしょう。

 

またMSテクニックを活用することで不快な高音域を取り除き、ボーカル・トラックの飽和を防ぐこともできます。箱鳴りの悪い会場でオーディエンスを満足させる音を作ることは容易ではありません。MSテクニックを活用することでボーカルやその他のリード楽器を効果的にシェイプできることができるのです。

 

bx_refinement にもMSテクノロジーが用いられています。ステレオ信号全体だけでなくミッド/サイド信号に対してアクティブ・フィルターを個別にかけることが可能です。またステレオ・バージョンのbx_consoleにはMSチャンネルのソロ・ボタンが搭載されています。さすがにライブ中にソロ・ボタンを押すことは無いと思いますが、サウンド・チェック時の音作りに活用できます。また、bx_saturatorはMSテクノロジーを全面的に用いたプラグインです。サイド信号を多めに歪ませることでとてもクールなサウンドが得られるんですよ。原音の雰囲気を保ちつつパンチを加えることができます。

自ら所有するNeve VXSコンソールと共に

DH:  bx_consoleの開発はここ1~2年の大きなプロジェクトだったようですね。開発の経緯と製品の特徴について教えてください。

 

DU: 若い頃(もちろん今でも)大ファンだったドリーム・シアターのボーカリスト、ジェイムズ・ラブリエをプロデュースしたことは先程お話しましたよね。そのきっかけは大きなスタジオを経営するロシア人起業家との出会いでした。彼の紹介でジェイムズとのプロジェクトに参加することになったのです。この時生まれて初めてNeveのコンソールを使って録音とミックスを行ったのですが、NeveコンソールのスイートでハイクオリティなEQサウンドに感動し、いつかこの卓を手に入れようと心に誓いました。bx_consoleがモデリングしたコンソールはまだスタジオに置いてあるんです。若いころスタジオ経営もしていましたし、これまでかなりの数の機材を触りましたが、 その中でもNeveは本当に特別なコンソールだと断言できます。EQでかなりのブーストをしてもサウンドが不自然になったり耳障りになることが無いんです。特にロックやポップスの場合、過激なEQによってサウンドが破錠してしまうことは良くあるのですが、Neveを使えばそれがありません。

 

私が所有するこのコンソールは数年前にスウェーデンで売りに出されているを発見し購入したものです。それ以来私たちの作る全プラグインのリファレンスに使用しています。例えばBrainworxブランドのプラグインの場合、このコンソールで同様の処理をしたサウンドとプラグインとを比較しながら開発を行ったりもしますね。

 

bx_consoleの開発は約2年前から本格的にスタートし、完成までにかなりの労力を要しました。開発の途中段階でもコンプレッサーやEQはかなりのレベルまでモデリングできていたのですが、私たちは更に上のレベルを目指しました。Neveのコンソールを使っていると、アナログの方がデジタルより良いと皆が言う理由が分かるんです。その理由の一つには、チャンネル毎の僅かな挙動の違いが関係しています。

 

例えばステレオ信号のLRチャンネルに同じ設定でEQをかけたとしても、実際は微妙に異なる処理が施されるのです。それによる微妙な位相ずれが、人間の耳に心地く感じる、ある種の深みを与えているのです。技術的には完璧とは言えないこの挙動によって耳が喜ぶんです。この効果が例えば30本近いステレオ信号に施された後にミックスされれば、素晴らしい奥行きと広がりを感じさせる、いわゆるアナログらしいミックスが出来上がるわけです。

Brainworx bx_console plug-in

私は開発者達とアイデアを出し合い、一つの結論にたどり着きました。オリジナルの回路を測定し、センター周波数やQの幅だけでなく、アタックやリリース・タイムにも影響を与える150の部品を特定、完璧なモデリングに成功したのです。EQの周波数だけでなく、コンプレッサーやゲートも僅かに異なる振る舞いをするのが特徴です。

 

つまり1つのプラグインの中に、挙動が微妙に異なる72本のチャンネル・ストリップが存在するかのようなアルゴリズムを採用しました。あなたのDAWでNeveコンソールが生きていると言っても良いでしょう。つまり72チャンネルの巨大なNeve VXSコンソールでライブ・ミックスができるということになります。オリジナルの実機を現場で使うことは現実問題不可能に近いですがbx_consoleを使えばそれが可能になるのです。

Marie-Maiのライブでボーカル・チャンネルに bx_consoleを使用するエンジニアPat Guertin

DH:  100% Venue AAX Bundleには他にどんなプラグインがバンドルされているのでしょうか? ライブの現場でそれらを使う利点についても教えて下さい。

 

DU: bx_optoコンプレッサーは驚くべきサウンドが簡単な操作で得られるとてもクールなプラグインです。マスタリング・コンプレッサーのようにパラメーターを細かく設定する必要ありません。たったの一つのノブを回すだけで素晴らしいサウンドが得られます。もう少し効果が欲しければ、ノブをもう少し回すだけで設定は完了です。

Brainworx bx_refinement plug-in

Brainworx bx_opto plug-in

また、色付けが行えるコンプレッサーとしてelysia mpressorを採用しています。bx_optoと同様、例えばドラム・トラックやスネアに色付けとパンチを加えることができます。アグレッシブなベースを馴染ませる用途にも抜群です。このmpressorは、上位機種であるマスタリング・コンプレッサーelysia alphaコンプレッサーに比べて操作が簡単です。色付けも含めロック向きと言えるでしょう。ちなみにelysia alphaコンプレッサーは次期リリースのライブ・バンドルに含まれる予定です。

今回100% VENUE AAX Bundleでライブ市場に参入することになりましたが、私たちはこれまでも様々なマーケットに向けてアプローチし、現場のエンジニアたちに受け入れられて来ました。そしてこれこそがPlugin Allianceがここまで成長できた理由の一つだと考えています。Maag EQやmpressor、bx_digitalなどライブ・バンドルに含まれるプラグインを一度でもお使い頂けば、あらゆる場面で、そして最もクリティカルな場面でこそ使われるべき製品であることがお分かり頂けるはずです。

elysia mpressor plug-in

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Avidライブサウンド・システム及びノーテーション・シニア・マーケティング・マネージャー。 以前はEuphonixとE-MUシステムで働いていた経歴を持つ。