第89回アカデミー賞でオスカーを取り巻く映画編集エディター

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ProVideoCoalition のインタビュー記事『Art of the Cut』を担当するにあたり、過去数年間のアカデミー賞編集賞にノミネートされたほぼ全てのエディターと、過去20年間のオスカー受賞者の6人にインタビューする幸運に恵まれました。また、『最後の追跡』のジェイク・ロバーツは前作の『ブルックリン』についてのインタビューでしたが、今年の候補者は、全てインタビューを行いました。本年度の候補者の全てがMedia Composer と Avid NEXIS またはAvid共有ストレージの旧モデルを使用しています。『Art of the Cut』の全インタビュー記事は、こちらからご覧ください。

Joi McMillon, Moonlight

何度も一緒に仕事をしてきたナット・サンダースと共同で編集した『ムーンライト(原題: Moonlight)』は、ジョイ・マクミロンにとって、初めてエディターを務める長編映画でした。同じ映画学校に通った2人は、卒業以来、バリー・ジェンキンス監督の作品を編集してきました。

 

マクミロン: ナットと私は、他のプロジェクトでもバリーと仕事をしてきました。ナットは、バリーの最初の監督作品『Medicine for Melancholy』のエディターでした。私は、様々なCM作品や、『Chlorophyll』という短編映画でもバリーと仕事をしています。2人ともバリーとは仕事をしてきているので、彼の好むスタイルや彼の映画へのアプローチも理解しています。私たちはとても仲の良い仲間なので、一緒に編集作業をするのは、とにかく楽しくて、仕事という感じではありませんでした。編集室での時間は楽しい時間でした。同じオフィスの近い距離で、片側に私が、反対側にナットが、そしてバリーは基本的に別々のシーンの作業をする私たちの間を行ったり来たりしました。作業中は、「ジョイ、ちょっとこれ見て」といったやり取りが飛び交い、バリーと私が一緒に作業する時は、バリーが「ナット、これはどう思う」と聞くなど、実に楽しかったです。

 

ハルフィッシュ: セリフがとても少ない会話シーンの編集は、難しくはありませんでしたか?

マクミロン: 映画の最初の7分~10分間、主人公のリトルは喋らず、ホアンが彼を喋らせようとするシーンは、難しいシーンにもなったと思いますが、そんなことはありませんでした。あまりセリフのないシーンの編集は、確かに難しい場合があると思います。2人の間に多くの会話が無くても、観客の気持ちを掴み、シーンに惹きつけるには、俳優の演技に頼らなくてはならず、彼らの表情は最強の武器になります。

 

ハルフィッシュ:  母親が車の中でコカインを吸うシーンと、アパートでシャロンと母親が見つめ合うシーン、これらは素晴らしい編集でしたが、覚えてますか?

マクミロン:とても良く覚えています。その部分はナットが担当しましたが、初めて見た時、「なんてパワフルなのだろう?!」と思ったことを覚えています。彼女が言うことが聴こえない、そして後でそこに戻るという選択は、とてもスマートな選択だと思いました。彼女が言っていることが聴こえなくても、リトルの表情を観ればそれがとても痛烈なものだとわかり、彼女が言ったことがなんであれ、リトルには大きな一撃だったとわかります。

 

ハルフィッシュ: 典型的な並列に並べるテクニックのひとつですね。これらのチャプターについて、少しお聞かせください。チャプターは別々のものです。チャプター・ブレイクがあって、チャプター名があって。これらを分けた理由は?つまり、幼少期から高校生の成長期、大人へ移るカットでは、閃光があって画面が黒くなり、数秒後にチャプター名がでます。

マクミロン:そうですね、それが、バリーが物語を紡ぐ手法です。チャプター、シーンの終わり、それぞれのチャプターの名前の開示について非常に具体的な指示がありました。私たちがやろうとしたのは、何の情報もなく観客を物語の中に放り込み、観客にリトルを感じてもらうことでした。観客は、まずシャロンを体験し、次にブラックを体験、それから、この物語の中でのあだ名を知ることになります。つまり、この人物が誰なのかを観客が体験するためのものです。それから、彼らの名前を観客に教えます。これが、基本的にバリーの手法に添ったものでした。

 

HULLFISH: 映画の中で2度あったと思うのですが、会話シーンのクローズアップで非同期サウンドを使ったことについてお聞かせください。レストランで、母親とケビンが最初にあった時、母親で1度、ケビンで1度あります。ケビンのクローズアップのスローモーション・ショットのようですが、彼はシャロンの名前を口にします。彼が一夜を過ごした時、母親は彼がどこにいるか知らずに『どこにいるの?』というふうに彼の名前を口にしますが、シンクロしていません。その理由について教えてください。

マクミロン:バリーが観客に体験してもらいたかったことの1つが、観客はリアルタイムで時間を体験していながら、ゆっくりと流れるように感じる瞬間でした。そこで、速度を落とすことでこれらの感情を伝えようとしました。観客の反応はとても良かったと思います。中庭で明らかにハイになっている母親に会っている時、それから、ケビンと再会した時、彼が車で向かう間に心の中で繰り返し思い描いた瞬間、実際に会っている瞬間、互いを見ている瞬間。私たちは、その瞬間をゆっくりと映し、シャロンが受けた衝撃を観客にも感じてもらいたいと考えました。

ジョイ・マクミロンのインタビュー全文は、こちらからご覧いただけます(英語)。

Joe Walker, ACE, Arrival

エディターのジョー・ウォーカーは、広く仲間から尊敬されています。『それでも夜は明ける』で2013年アカデミー賞候補になった後、アカデミー賞候補にはならなかったもののACEエディー賞にノミネートされ、同年のベスト映画編集の1つと広く称賛された『ボーダーライン』を編集しました。ウォーカーは、『ボーダーライン』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品『メッセージ(原題: Arrival)』に加わりました。

 

ハルフィッシュ: 編集は、最も重要な芸術要素として、時間を扱い、時間を使用する芸術の形です。この映画は、話の筋自体が、時間の流動性に関するものでした。それによって自由度は高かったですか?

ウォーカー:湖畔の子どもの素材は、どんな順番でも映画にできるものが揃っていました。「ノンゼロサム・ゲーム」の会話の場面のように特定の場所を意図したセットが幾つか、台本通りにありました。しかし、子供が見つめる先のぼやけた馬のショット、初めて未知の宇宙人のヘプタポッドの前に立つのと同じような遭遇、または、水面をこするヘプタポッドの足のようにみえる小枝のショット等は、それ自体が物語の進行を妨げないので、どこにでも配置できました。

また、膨大な数のあらゆるTVやコンピュータのスクリーンは、ブルーバックで撮影されました。世界が一種のパラノイアと不安定さに陥っているということを伝えるために、ニュース報道を作成、アーカイブする必要がありました。全て、とても自由にできましたが、アーカイブを選択し、ニュース報道を書き、プレゼンターを撮影し、グラフィックスを作成する等、時間がかかりました。

もちろん、宇宙人の場所を空けていました。メインの2体が、デイリーから完全に欠けていました。セットでは、(似合う人に会ったことがない)緑色のクロマキー用スーツに身を包んだ誰かが、目の高さになる位置にテニスボールを持って立ちました。進行するに従い、かなり自由にあれこれと物事を変えたり、ストーリーをいじることができました。

 

ハルフィッシュ: 制約があると、ある意味、芸術は容易になると人は言います。もっと難しくなると人々は考えますが、そのような自由を得ることは、現実にはとても難しい。

ウォーカー: 予算に余裕があったおかげで、工程の最終段階でも、「彼らは気付かないうちに到着しているので、映画の最後に、宇宙船がいなくなるのをみましょう」と言うことができました。VFXスーパーバイザーのルイス・モリンに「不可能はない」と言ってもらえたのは、とても心強かったです。しかし、確かに、制約もまた刺激になります。それが無ければ、『勝手にしやがれ』も、ジャンプカットもなかったのですから。

 

ハルフィッシュ:  そのたとえについて、少し説明してください。

ウォーカー: ごめんなさい。映画オタクの表現でしたね。編集でジャンプカットを効果的に使用したジョン・リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』を思い描いていました。どの話を信じるかによりますが、ラッシュの段階で大幅に短縮しなければならかったから、または、セットでフィルムを反転させる予算がなかったからジャンプカットを使用したという話が元です。

 

ハルフィッシュ: フラッシュバック/フラッシュフォワードはマテリアルをどのようにまとめたのですか?通常は、シーン15のものは全てシーン15ビンに入ります。ビンを開いて、8ショットあれば、それで、「OK、これが素材だね」となります。しかし、この映画では、シーン15は、ルイーズの子どもとの生活から情報をとってくる場合もあります。それをどのように整理したのでしょうか?

ウォーカー: 素材用のフォルダーがあり、主にロケーションや行動によってビンに分けられていました。素材を覚えるのは得意なんです。全てのショットを繰り返し見て、異なる組み合わせや形をあれこれ試しました。ピッタリ最初から明らかに抜きんでたショットがいつもありました。素材は、詩的で叙情的なものを作り出せる大きな可能性に溢れていました。どのショットを次に持ってきて、どのショットを対比させるかは、直感に従うだけです。時には音楽を使い、また、時には全ての音を消して無声映画のように編集しました。

 

ハルフィッシュ: 映画の冒頭の説明部分で難しかったことは?世界中で起こっていることを説明して、話に入っていく。しかし、その前に、どのような世界に居るのかを説明しなくてはなりません。

ウォーカー:実際には、2つの世界があります。時間をかけて、ルイーズが軍隊環境に合わないことを見せていきました。例えば、湖畔の家にいるルイーズと娘の全ての‘フラッシュバック’映像には、スクリーンがありません。基地の映像は、スクリーンだらけです。ヘプタッポッドと出会う観察室は、1つの巨大なシネマスクリーンです。

 

ハルフィッシュ: 緊張感を作りだすことについて、お聞かせください。映画の最後の方で、重大な電話の場面があります。何かが起きるという緊張感が、容易に伝わります。この緊張感をどのように作り出したのか、電話シーンの編集では何をしたのか、お聞かせください。

ウォーカー:中国軍司令官への電話と、彼女がパーティーで司令官と会うシーケンスは、合わせることは全く考えていませんでした。元々、別々のシーンとして書かれていたのです。飛行場にいるルイーズの頭に、司令官に会って話す場面が浮かびます。次に、彼女は衛星電話を探すために走り出し、兵士たちが彼女を探し出す前に彼にメッセージを伝えようと電話をかけます。この部分は、最後の最後、最初の試写会から数週間たった頃まで固まりませんでした。兵士に追われるルイーズの時間との戦いを加えながら、彼女が何をすべきか、彼女と同じくらい観客が緊張し、どうしてよいか分からない状態にしたかったのです。2つのシーンは、インターカットするように演じられていないので、私たちは並列に並べる状態を破ろうとしました。うまくいくまでには少し時間がかかりましたが、何とかできて良かったです。これがなければ、観客には何が起こるか分かってしまい、物語がリアルタイムに進まず、観客に遅れてしまうところでした。

 

ハルフィッシュ: 非常に自然だったので、あれがインターカット・シーンとして書かれていなかったなんて、想像もしませんでした。

ウォーカー:25、6週間ぐらい、2つのシーンは別々でした。この緊張感にふさわしいクライマックスを加えるため、ポスプロで「シェル」の壮大な旅立ち、テレビニュースの巨大な壁を加えました。

私の編集に対する思いは、ビクトリア様式のおもちゃの劇場のように、切ったり動かしたりできるものへと進化しました。

ジョー・ウォーカーのインタビュー全文および実際のMedia Composerタイムラインは、こちらからご覧いただけます(英語)。

John Gilbert, ACE, Hacksaw Ridge

ジョン・ギルバート、ACEは、『ロード・オブ・ザ・リング』、『テラビシアにかける橋』、『マーヴェリックス/波に魅せられた男たち』、『スパイ・レジェンド』、最近公開されたメル・ギブソン監督映画『ハクソー・リッジ(原題: Hacksaw Ridge)』等、素晴らしい作品を手掛けてきました。

 

ハルフィッシュ: デイリーの見方は人によって違います。あなたは、どのようにみていますか?

ギルバート: 最近では、毎日3,4時間分のマテリアルを撮影しますが、私には、最初から最後まで全てをみる根気も、記憶力もありません。実際、1日に9時間分の映像を受け取ったことがあります。やや古いやり方だと分かっていますが、テキストビューで作業します。アシスタントがビンをセットアップしたら、シーン毎にKEMロールを作らせます。私は、台本を前に置き、アシスタントは、それぞれのショットの脇に、ミディアム・ショット、クローズアップ等、ちょっとした説明を加えます。

彼らがそれをシーンに分けてくれたら、まず、どんなものがあるのか、丸を付けたテイクにざっと目を通します。どこでワイドショットを使うか、どこでクローズアップを使うか、受け取った映像をどうやったら一番良い形で使えるか、シーンの流れを自分の中で把握しておきたいからです。シーンの重要だと思う瞬間を見つけ、演技の中で見つけたキラリと光る魔法のような箇所を書きとめます。これをしながら、ストーリーに添って選りすぐりのシーケンスを作ります。これが、ラフになります。脚本監督と監督が良い関係で、彼らの考えていることや、撮影時に気に入った瞬間を教えてくれる場合にはとても役に立ちます。

それから、思い描く形にまとめていきます。その過程で、他のアイディアが浮かぶこともあるし、丸を付けたテイクが活きることも、そうならないこともあります。出来上がったものを良くするために、他の演技やアクションを探し始めます。

 

ハルフィッシュ: パフォーマンスの温度を変えることについて少しお聞かせください。

ギルバート:それについては、直感を信じるのみです。信じることができて、リアルに感じられ、作られたものではなく、シーンの中で使えるパフォーマンスをいつも探しています。キャラクターがどのようにお互いに反応するかをみます。多くは目の表情で伝わるので、目と目が合う瞬間やその前後の編集のタイミングは、とても重要です。

 

ハルフィッシュ: 眼差しの編集ですね。

ギルバート:キャラクター間のアイコンタクトの瞬間は、とても重要だと思っています。目と目が出会う瞬間を探し、編集を使ってそれを強調する、または、ストーリーによっては別の方法を使って、ドラマを作ります。

 

ハルフィッシュ: シーンはどのように作業しますか?

ギルバート:初めて素材を見る時、重要と思う部分やシーンに入れるべきと考えるものを抜き出し、セレクトリールのようなものですが、それをストーリーの順番に並べます。扱える重要な部分揃ったら、そこからシーンを作ります。最初は、ストーリーを追うようにしますが、通常それは、かなりストレートです。次に、水面下で消える泡のような、根底にある意味を探します。そして、複雑性を加えて、シーンが複数のレベルで機能するかどうかを確かめます。

通常、撮影された次の日に作業したら、シーンからいったん離れ、1日か2日後にまたそのシーンに戻ります。時にはシーンの細部に迷うこともあり、そうすることで、どのようになるかをより客観的にみることができます。

 

ハルフィッシュ: 速度について伺います。一緒に動くものや役者間の視線を使って編集する理由となるようなお話がでましたが、シーンの速度を決めるものはなんですか?

ギルバート:私は、かなり積極的にペースを上げます。観客には座席で「何が起こっているのか、次はどうなるのかわかる」と思ってほしくないのです。観客には、目を見開き集中していて欲しいので、それがペースを決める一番で、最優先することです。

長いシーンをできる場所は、限られているので、気を付けて選ばなくてはなりません。ペースの変化も、とても重要です。速いだけ、遅いだけでは、単調でつまらないものになります。どこでペースを上げるか、どこでペースを下げるかを見極めなくてはなりません。私は、説明部分は速く、感情の部分はゆっくり過ぎるようにしています。

 

ハルフィッシュ: 編集を活かし、シーンを活かすために、サウンド・デザインは重要ですか?

ギルバート:もちろん、サウンド・デザインはとても重要です。戦闘シーンなどでは、サウンド・デザインが大きな部分をしめます。適切なペースを作るには、サウンド・トラックが不可欠です。この映画では、3つの大きな戦闘シーンがあります。最初の11分間のシーンでは、早い時点で、音響効果だけで音楽は使わないと決めていました。音響担当のスタッフはとても驚き、滅多にないことなので喜びました。「こんな場面は、普通、音楽で満たされる」と彼らは言いました。しかし、私は、攻撃が熾烈な最初の戦闘シーンを音響効果に任せたかったのです。2番目の戦闘では、感情の度合いを高めたいと考えました。そこで、 それができるまで、音楽を止めることにしました。約6分間続き、圧倒されたところでドラマティックな音楽を挿入して、うまくいきました。音楽によって、映画の感情の推移を表現できました。観客が逃れられないような、凄まじい攻撃を作りたいと考えました。それは、全くの混乱状態でしたが、どこにいるのか、何が起こっているのかが分かる構成された混乱でなくてはなりませんでした。最後が3番目の戦闘シーンです。この部分は、戦闘というには穏やかで、長さも短かったのですが、大部分は48と96pfsの間のペースで編集しました。

 

ハルフィッシュ: デイリーに戻りますが、スクリーニングでは、Avidのマーカー、紙のメモ、それとも何か他のものを使いますか?

ギルバート:確かに何かメモを残すのは良い考えだと思います。でも、私はある理由から使っていません。全体を見ながら、ちょっとしたセレクトロールを作ります。重要と思うものを全て抜き出して、ストーリーの流れに合わせて並べます。それが、私の記録のとり方ですね。

ジョン・ギルバート、ACEのインタビュー全文は、こちらからご覧いただけます(英語)。

Jake Roberts, Hell or High Water

エディターのジェイク・ロバーツは、ドキュメンタリーから始めて、映画編集に携わる前はテレビドラマの編集も行っていました。今では、人気のエディターです。『最後の追跡』の前には、『Trespass Against Us』、『ブルックリン』を編集しました。これは『ブルックリン(原題: Brooklyn)』についてのインタビュー記事です。

 

ハルフィッシュ: 映画では、監督とエディターは、他の誰とよりも多くの時間を共にします。それゆえ、お互いに気が合い、信頼でき、また、長時間、一緒に過ごせる相手でなければなりません。

ロバーツ:「3か月間、この人と同じ部屋で過ごせるか」ということですね。

 

ハルフィッシュ: Avidで編集ですか?共有ストレージは使いましたか?編集チームについてお聞かせください。

ロバーツ: Avidの共有ストレージでAvid Media Composerを使っています。制作中は、3人のアシスタントが代わる代わるついてくれました。ロンドンでは、2システム使い、グレーディングも行っていたMolinareというポスプロで編集していました。そこでは、週ごとに巨大なグレーディング・シアターで映画を投影させてくれて、とても助かりました。そのサイズで映画を観ると、リズム、カットする場所が違ってくるため、その効果は多大でした。

 

ハルフィッシュ: それを聞こうと思ったところです。もう少し、話していただけますか?私が映画編集をする場合、ほとんどをコンピュータの画面で行っています。一週間ほど前、大きなスクリーンに映して、自分の思っていたペースとの違いに愕然としました。あるシーンでは、場所から場所へ視線が移るのに時間がかかるため、もっと長くしたかったのです。

ロバーツ:若い視聴者の中には、映画をiPhoneで観る人もいるという悲しい現実を受け入れなくてはならない今の時代でも、70インチのスクリーンを想像し、素晴らしい劇場での公開初日といった最高の環境に向けて編集しなくてはなりません。スクリーンの大きさが十分大きいと、目は一度に全てを認知することが出来ず、視線は必然的にスクリーンの特定のポイントにいきます。多くのインフォメーションがつまったイメージの場合、目は全てを見るために長めに見て、フレームの中での中心、特徴点を探します。そこで、私は、出ていくイメージの中心が、入ってくるイメージの中心と同じようにするよう心掛けています。フレームの同じようなポイントに彼らの目を描けば、観客はフレームの中を探す必要なく、次のショットに簡単に移ることができるからです。

また、小さなスクリーンでは見逃してしまうものも大きなスクリーンでは見えます。時には、観客に気付いて欲しくないものもありますが。何とか逃れようとした繋ぎの悪さやちょっとした備品、様々なごまかしが、フレームが大きくなることによって見えてしまいます。通常は、イメージが大きくなればなるほど、理解する時間がかかるので、少しペースを落としたいということになります。編集中、それなりの大きさのスクリーンで定期的に作品をみることができるのは、願ってもないことです。

 

ハルフィッシュ: お父上が脚本家だと伺いました。脚本家とエディターは車の両輪、始めと終わりだと思っています。ピエトロ・スカリア氏はインタビューの中で、「編集は、イメージを伴う著述」と表現しました。ストーリーをどのようにとらえますか?恐らく、お父上から学ばれたことだと思います。また、エディターにとってストーリーを理解することはなぜ重要なのでしょう?

ロバーツ:絶対的に不可欠だと思います。編集は、本質的に映画の書き直しだと言う人がいます。確かに、物語を書く行為にとても似ています。脚本の構成が、意図した通りに機能することも、しないこともあります。その構成のリズムを変えなくてはならない場合もでてきます。脚本20ページ分が、上映時間で40分以上に膨らんでしまったものを、20分に編集しなくてはならない場合もあります。それが、その映画には適切なリズムだからです。ですから、キープしなくてならないこと、無くても良いことを十二分に理解する必要があります。ストーリーテリングは、結局、情報とタイミングという2つのことに行きつくと思います。観客が必要とする情報は何か、そして、その情報をいつ与えるか。脚本を読み、それについて話し、映画を観て育ったことで、今の私がいるのは間違いないと思います。私は、映画学校に行っていません。沢山の本や理論を読んできました。そして、ストーリーテリングが大好きです。しかし、結局は、学んだことよりも直感がモノを言います。

長年、数多くのドキュメンタリーの仕事をしてきましたが、関わってきたドキュメンタリーは、ナレーションのない、こっそりと観察を続けるものが中心でした。数百時間に及ぶ映像、明確なストーリープランもありません。編集は著述の一形式だとおっしゃったように、ドキュメンタリーでは、まさに、進みながら物語を書き、自分で物語を構成しなくてはなりません。ストーリーテリングと本質を同じくするドキュメンタリーは、ストーリーテリングには最高の学校です。映画には、演技があります。同じような注目範囲を持つ観客がいます。魔法の杖なしで、それらすべてを行わなくてはなりません。250時間のランダムな映像と格闘して、演技と構成の付いた90分間の分かりやすい映像にまとめることができれば、才能ある作家の脚本により、時間をかけて作られてきた長編映画を制作することになった時、「簡単」とは言いませんが、大変な部分の多くは既にこなしているでしょう。私にとって、ドキュメンタリーは、その意味で素晴らしいトレーニングの場でした。

ジェイク・ロバーツのインタビュー全文は、こちらからご覧いただけます(英語)。

Tom Cross, ACE, La La Land

トム・クロスは、編集の最高傑作と称された『セッション』で2015年度アカデミー賞編集賞を受賞しました。また、『Joy』も共同編集しました。デミアン・チャゼル監督との次の作品は、『ラ・ラ・ランド(原題: La La Land)』です。

 

ハルフィッシュ: ミュージカル編集には何か独特のこつがありますか?それとも、他の編集と変わりませんか?

クロス:音楽と言う全く違う要素が加わるので、とても難しかったです。通常は、感情、ストーリー、連続性、地理等、様々な要素を基に編集を決めていきます。ミュージカル映画では、これらの要素も考えますが、音楽とぴったりと合わせることを考えなくてはなりません。違和感が出てしまい、音楽的に調整できないこともあります。その場合、編集またはスピードを変えることで、音楽に合うよう映像をかえなくてはなりません。デミアンは、正確さを重要視しました。以前、プロを目指すドラマーだった彼は、リズムにはとても厳しいのです。

 

ハルフィッシュ: 以前一緒に仕事をしたデミアン監督と再び仕事をしたわけですが、監督とのコラボレーションについて少しお聞かせください。

クロス:私たちは初めて会った時、すぐに、意気投合しました。大好きな映画が同じだっただけでなく、編集についてデミアンの話を聞くと、彼がその可能性を深く理解していることがわかりました。デミアンは、参考となる映画のリストをくれて、ジャック・ドゥミの作品や、『雨に唄えば』、『いつも上天気』、『ウェストサイド・ストーリー』等の50年代、60年代のハリウッド映画からインスピレーションを得ていると私に話しました。彼は、『シェルブールの雨傘』と『ロシュフォールの恋人たち』の大ファンでした。この2つの映画が、『ラ・ラ・ランド』の大きなインスピレーションとなりました。監督がインスピレーションとなるものを共有してくれるのは、とても有用だと思います。参考映画は、その分、解釈せずにすむので、特に役立ちます。もし、映画製作者が、「フランク・ロイド・ライトに影響を受けた」と言ったら、もう少し解読が必要です。誰かが、「『レイジング・ブル』のボクシング・シーンのような感じのミュージック・シーンが欲しい」と言えば、それは、どんな見た目またはフィールが求められているか、かなり良いヒントになります。

 

ハルフィッシュ: それは『セッション』の話ですね?

クロス:その通りです。

 

ハルフィッシュ: しかし、『ラ・ラ・ランド』のペースは、『セッション』とはかなり異なります。

クロス:デミアンは、『ラ・ラ・ランド』で感情や雰囲気の違いを編集スタイルによって出そうとしました。

彼は、この映画を、常にリズム違いのロマンスとして捉えていました。80年代のパーティーで出会う時、素っ気なさが流れます。主人公同士は、お互いを嫌っています。彼らはお互いに相手を貶めようとします。編集にはそのペースが反映しています。こき下しは後から後から続きます。

その後、『A Lonely Night』ナンバーでは、スローダウンして、お互いを知ろうとする2人に時間をかけました。彼らは知りたがっていました。私たちは、ある種のロマンスの緊張感を感じ始めます。夜、丘の上で彼らが車を探す場面は、カット無しの1シーンで見せます。

次に、彼らがすっかり恋に落ちた時、ペースは最高潮に達します。夏、彼らは、LAのランドマークをまとめたイメージ編集の中、街を駆けまわります。場面はジャズクラブに移ります。セバスチャンがピアノを弾き、ミアが踊る間でカメラは行き来します。このカットは速く、ダミアンは、恋に落ち、心を奪われた時の感情を表現しようとしました。刺激的です。

一般的に、ダミアンは1つの編集スタイルが他の編集をも良くすると分かっていました。例えば、カット無しの長いテイクも、慎重に使いさえすれば効果的です。丘の上でのソフトなエッジとカーブのダンス・シーンは、ジョン・レジェンドンドのコンサートのようなシャープなエッジのシーンとバランスします。

 

ハルフィッシュ: インターカットについてはどうですか?分けて短くすることは考えませんでしたか?ハイウェイ上からナイトクラブまでずっと、それぞれ撮りたいと思っていましたか?

クロス:彼らが出会う前、それぞれがどれだけ孤独であったが強調されるので、登場人物の紹介は、長いテイクで別々のほうが良いと感じていました。

トム・クロス、ACEのインタビュー全文は、こちらからご覧いただけます(英語)。

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スティーブ・ハルフィッシュは、映画およびTV番組制作エディターである、編集およびカラーコレクションに関する6冊の著書を持つライターです。最新作の『Art of the Cut』、『Avid Uncut: Workflows, Tips and Techniques from Hollywood Pros』が3月に発売を予定されています。ハルフィッシュは、『“War Room” (2015)』や『Courageous.” (2012)』を含む長編映画を5本編集した経験を持っています。また、Verascope Picturesという自身のプロダクション会社を持ち、世界中の編集およびカラーコレクションのトッププロフェッショナルを育成してきました。エディターに対するインタビュー・シリーズは、オンライン(www.provideocoalition.com/tag/art-of-the-cut)でもご覧いただけます。