Pro Tools/Media Composer:AAFを使った4Kプロダクション相互運用ワークフローの為のヒント

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Pro Tools 2019.10で4K映像データを扱えるようになり、4Kコンテンツ・プロダクション時のオーディオ・ポストの手法の選択肢が増え、制作効率をより向上させることができるようになりました。

Avidが提案する4Kプロダクション向けオーディオ・ポスト・ソリューションは、大きく分けて

A) Media Composerを使いVideo Satellite使って同期する方法

B) Pro Tools側に映像データを取り込み作業する方法

となります。

 

Video Satelliteを使うとMA室にも4Kモニターが有る場合、Media Composer側はシーケンス状態のまま再生、Pro Tools 2019.10(以上)側のセッション・タイムラインを59.94/60fpsに設定してフレーム精度での編集を行う事ができます。

従って、4Kビデオ・ファイル共有時の運用性を考慮するとVideo Satelliteを使う方法が、最も効率的ですが、予算都合や設備状況等により、この方法を選択できない場合もあるでしょう。

その場合は、「Pro Tools側に映像データを取り込み作業する方法」での運用となり、Media Composer(または他の映像編集ソフト)とPro Toolsの間を、それぞれのAAFエクスポート/インポート機能を使ってビデオ/オーディオ・データ相互互換運用を検討することになります。

ここでは「Video Satellite」を使用しない場合を想定した形でのAAFシーケンスでの相互運用を見ていきましょう。

この「Pro Tools側に映像データを取り込み作業する方法」の場合、厳密には

  • Pro Tools同士をSatellite Linkで同期させ、うち1台のPro Toolsを映像再生専用として使用する。
  • オーディオ作業を行うPro ToolsにAAFインポートで映像/オーディオ・データを取り込み作業する

という2つの方法が想定されます。

いずれの場合も、最も効率的なワークフローが期待できるのは、映像編集室とMAルームが1つのファシリティー・ネットワーク上にあり、映像データを共有する為のAvid NEXIS等のサーバーを使用できる場合です。

しかしながら、実際のプロダクション工程で常にその環境を保てるとは限りません。

従って、ここでは、映像編集ツールがAvid Media Composerであることを前提に「Pro Tools側に映像データを取り込み作業する」場合に最も有効だと思われる、AAF経由でデータを受け渡す際の幾つかのオプションを紹介しながら、それぞれのニーズに適したワークフローを選んでいただくためのヒントをご提示できればと考えています。

まずは、Media ComposerのAAFエクスポート機能について見ていきましょう。

上記ビデオで解説されているAAFエクスポート機能をベースに、実際のワークフローを解説していきます。

 

1. NEXIS共有サーバーを使用している場合

ご覧頂いたビデオにもあるように、NEXIS共有サーバーがあれば、ビデオ・ファイル自体を書き出す事なく、Pro Tools上でそのまま映像データ(必要であればオーディオ・データも)リンクさせて再生可能となります。

その場合、シーケンス上のビデオ・ファイルが、コーデック/ラッピングともに使用するPro Tools上で扱える形になっていること、そしてエクスポートする前に、該当シーケンス上のビデオ・エフェクトが全てレンダリングされている必要があります。

AAF経由でやり取りできるPro ToolsとMedia Composerのデータは、より多岐にわたっており、必要なビデオ・ファイルの条件を満たした状態でこのワークフローを利用すると、相対的に効率の良い相互運用性を実現することが可能となります。

例えば、以下のようにMedia Composer上で、オーディオ・トラックに対してAAXプラグイン、フェード、クリップゲインを実行し、マーカーを打った状態で、ビデオ・エフェクトのみをレンダーしAAFエクスポートしてみます。

AAFをエクスポートするMedia Composer上のシーケンス

Pro Tools上では、ファイル・メニューの「セッション・データをインポート」コマンドを使ってAAFファイルを取り込みます。

Pro Tools上でAAFシーケンスを「セッション・データ」としてインポート

この場合、ビデオ・メディア・オプションは「ソースメディアにリンク」を選択します。

下図では、オーディオはMA側で管理するメディアにコンソリデート(ソースメディアから統合)する設定になっていますが、NEXISから直接再生する場合は「リンク」を選ぶ事も可能です。

AAFシーケンスを取り込む際のセッション・インポートの一例

OKを押して実行すると以下のように、Media Composerで使ったオーディオ情報(マーカー、クリップゲイン、フェード、AAXプラグイン設定)が反映された状態でシーケンス並びにオーディオ・データを取り込むことができます。また、ビデオは編集点を反映しつつも、ビデオ・エフェクトも全てレンダーしている為、クリップ毎に設定したタイムコード・バーン・イン・エフェクトもそのまま表示されています。

2. 共有サーバーを使用していない場合

Media Composer シーケンス上では、Pro Toolsがネイティブで扱えるコーデックを用いて編集しているが、共有サーバーでのデータの受け渡しができないという場合は、Media ComposerでAAFエクスポート時に「コンソリデート」という機能を使って、MA側が使用できるメディアにデータを書き出します。

「コンソリデート」は、コーデック変換は行わずにシーケンス上にある必要なデータのみを取り出しMXFラッピングを行うため、トランスコードを行うより短い時間でエクスポート可能です。

この場合、コンソリデートは、ビデオ・データだけではなくオーディオ・データに対しても実行しますが、その際、ビデオ・データとは、異なった長さの「のりしろ」を個別設定可能です。一般的に、MAの際に使用する音声データの「のりしろ」はビデオよりも長めに必要になっていますので、この機能はとても便利です。

Media Composerコンソリデート時のビデオ/オーディオ「のりしろ設定」

コンソリデート先を指定し、AAFファイルとともにエクスポートした後、そのメディアをMAサイドに渡せば、後は「NEXIS共有サーバーを使用している場合」で説明したのと同じ手順でPro Tools上にそのデータをインポートしMA作業に移れます。

また、Pro Toolsへインポートする際、ビデオやオーディオ・データをMAサイドで管理しているサーバーまたはローカル・ストレージに取り込みたい場合は、「ソースメディアから統合」を選ぶと、Pro Toolsセッションを作成したメディア上に、両データがコピーされ、それらを使って作業が行えます。但し、特に容量の大きな4Kビデオを扱う場合は、本来的には、そのまま「リンク」で再生できるメディアまたは設備環境を整える方が、時間の節約となる為、理想的です。

3.リンク・メディアを使っている場合

共有サーバーの有無に関わらず、Media Composerで映像編集時にPro Toolsがネイティブで扱えないコーデックやラッピングを使用して編集している場合、幾つかの受け渡し方法が考えられます。

一つはビデオ・シーケンス上の全てのクリップをPro Toolsがネイティブで扱える状態に全て「トランスコード」した上で、AAFエクスポート方法を使うやり方です。

Media Composerトランスコードを伴ったAAFエクスポート例

トランスコードは、AAFエクスポート時に実行する以外に、シーケンス上で実行することもできます。この場合は、バックグラウンドでの処理が可能ですので、十分なマシーン・パワーを持つシステムで作業できる場合は有効でしょう。

トランスコード設定の一例

トランスコード用に選択できるコーデックは、設定しているMedia Composerの「プロジェクト」の仕様に依存します。上図例では、MAに対して4Kラスターサイズでデータを渡す想定で、4Kコーデックの中では比較的再生負荷の低いDNxHR LB(使用帯域59.97fps時42.85MB/Sec)へのトランスコードを選択していますが、例えば、映像編集は4Kで行っているがMA室にはHDモニターしかない為、HDラスターサイズで書き出したい場合は、Media Composer上の「設定」>「フォーマット」のラスターサイズをHD仕様に変更してから実施するとHD用のコーデックを選択してトランスコードすることが可能となります。

 

フォーマット上でラスターサイズをHDに変更

注意:フォーマット上でラスターサイズを変更しても、タイムコード・バーン・イン等の一部のピクセル処理ベースのエフェクトは、サイズ変更が反映されませんのでご注意ください。この場合は、AAF書き出しを行う前に、これらのエフェクトをオフにしておくか、リサイズした上でエクスポートを実行する必要があります。

 

4KビデオをHDビデオとして再生するには、上記のようにMedia Composer側でビデオ・ファイルそのものを変換する形でMAに受け渡す形が確実ですが、Pro Toolsを使用するMA側のコンピューターに十分なCPUパワーがある場合は、Pro Tools上のビデオ・トラック上の4Kビデオのラスターサイズ部分をコマンド・クリックでHDサイズに変更するという方法も試す価値はあるでしょう。

その際、フレームレートの変更も可能な場合は、同じくPro Toolsビデオ・トラック上のフレームレートもコマンド・クリックで59.94fpsから29.97fpsに変更するとビデオ再生時のCPU負荷が軽減される可能性があります。

Pro Tools上でビデオ・ラスターサイズとフレームレートを変更(コマンド・クリック)

AAFエクスポートする際に、事前にシーケンス全体のクリップをPro Toolsで取り扱い可能なビデオ・ファイルへとトランスコードした場合、上記の「NEXIS共有サーバーを使用している場合」で解説したように映像編集点も反映した状態でMAへのデータ受け渡しが可能となる為、オーディオ・ポスト作業するセクションにとっては理想的ですが、映像編集側から見るとシーケンスに紐づいたクリップ全てを「トランスコード」するに際して必要な時間が気になるところでしょう。特に4Kデータをトランスコードする場合は、一般的にHDデータ時の数倍の時間を要すると言われています。

このワークフローを、放送局のようなエンタープライズ・レベルで採用検討する場合は、複数システムで分散処理を行うMedia Composer | Distributed Processingも選択肢の一つとなるでしょう。この方法を使うと、編集に使用しているマシーンは、トランスコード処理から解放され、かつ複数のワーカー・マシーンで並列処理可能な為、より短い時間で処理することが可能となります。

Media Composer | Distributed Processing概要説明

注意:AAFエクスポート時の自動処理としてのトランスコード時は、Media Composer | Distributed Processingを使用することはできません。AAFエクスポート時にMedia Composer | Distributed Processingご使用になりたい場合は、あらかじめトランスコードを実行してからAAFエクスポートを実行してください

もう一つの方法は、ビデオでも解説している「ビデオ・ミックスダウン」です。

これはビデオ・データのみを一本化し、オーディオ・データのみをシーケンスの状態で渡す方法です。

その際、「ビデオ編集を伴うミックスダウン」を選択すると、一本化されたビデオ・データと編集点を伴ったビデオ・データの2つが作成されます。

この形で映像が書き出されるとPro Tools上の「セッション・データをインポート」のトラック上では2つのビデオ・トラックが表示されます。

インポートすると下図のように編集点を表示するビデオ・トラック(V1)と一本化されたビデオ・トラック(Mixdown)の2つの映像トラックが表示されます。

少し応用編になりますが、MA室でVideo Satellite/Satellite Linkシステムも併用している場合は、最初にMixdownビデオのみを取り込み、その後、新たにV1(ビデオ)のみを「新規サテライト・トラック」に変更してインポートすると映像オフラインの状態で編集点情報のみが表示されるようになります。

この方法は、Pro Tools上で再生されるタイムコード・バーン・インされた映像を見ながら通常編集作業を行い、ディレクター等とともに行うコンテンツ・レビュー時には、Pro Tools上での映像再生負荷をなくしオーディオ再生のパフォーマンスを確実に確保した上で、HDRカラー・スペースを反映させた4K高解像度映像を再生する為、Video Satelliteを使用したいといった場合に便利です。

サテライト・トラックとビデオ・ミックスダウン・トラック

「ビデオ編集を伴うミックスダウン」時に正しく編集点情報を反映させたい場合も、やはりシーケンス上でビデオ・エフェクトを予めレンダリングしておく必要があります。

その作業を行うのが難しい場合は、一本化したビデオ・ファイルのみをAAFエクスポートする設定を使うことも可能です。

 

編集点データを伴わないミックスダウン設定の一例

上図では、プロジェクトのフォーマットをHDラスターサイズに変更した上で、「ビデオ編集点を伴わないミックスダウン」を選択していますので、ミックスダウン時のコーデックもHD用のものが選択可能となります(ここではDNxHD90を選択)。

Pro Tools上でそのシーケンスをインポートするとHDラスターサイズ(1920 x1080、コーデックはDNxHD 90)でビデオ・トラックが作成されます。

HDラスターサイズにミックスダウンされたビデオを取り込んだPro Tools 

ここではMedia Composerのケースを中心に記載してきましたが、実際には他の映像編集ソフトの多くもAAF書き出しを行えるようになっています。但し、他の多くの映像編集ソフトではMedia Composerのような、必要なワークフローや環境に応じたPro Toolsとの相互運用性を確保した設定が行えない為、この「ビデオを一本化」して書き出す方法をとる方が確実な場合が多いでしょう。

注意:他の映像編集ソフトからPro Tools 2019.10(以上)用に「ビデオ・ミックスダウン」 を行ってAAFデータを渡す場合は、必ずPro Toolsで扱えるネイティブ・コーデックを選択してください。また、Pro Tools 2019.12以上で対応となったmacOS10.15 Catalina上でのQuick Timeラッピングのファイルの取り扱いには制限事項があります。詳しくは、こちらのページ内の「Pro ToolsとQuickTimeビデオを再生・エクスポートする」欄をご参照ください。

 

ワークフロー確立にはビデオとオーディオ「ONE TEAM」による意思決定が必要

どのAAFワークフローを採用するか決めるには、プログラム毎またはプロジェクト単位で、ビデオとオーディオの実際の作業に携わるエディター同士で、何が最も効率的な方法であるかを話し合う必要があります。

通常は、ビデオ編集側がMA側の希望する形でファイルを渡す形をとるのが一般的ですが、4Kのような大きなサイズのデータを扱ってプロダクションを行う場合は、既存のワークフローを根本的に見直した方が良い場合が多いでしょう。

例えば、非圧縮に近いデータを数多く扱うドキュメンタリーやドラマ番組制作等では、中間コーデックを元に行うオフライン編集時からMAとのデータ共有が必要となります。こういった場合は、毎回一本化ファイルを書き出すよりも、編集点の変更をすぐに反映できるAAF相互運用の採用が全体の効率を大きく上げる事になるでしょう。

一方、尺の短いCMやオンラインが終わってからMA作業が開始する一部のエンターテイメント系プログラムまたは外部のフリーランス・エディターにMAを依頼する場合等は、MA側で使用するCPUパワーやモニター環境に合わせたコーデックにトランスコードを行った上で、ビデオを一本化して渡した方が確実かもしれません。

4Kプロダクションに於けるファイル・ベース・ワークフローの成功の鍵は、この映像データのMAとの受け渡し方法の効率化が非常に大きな要素を締めています。

ここでの情報が皆様方の、ワークフロー効率化に少しでもお役に立てれば幸いです。

また、要件に応じてAvidソリューション以外の機器やソフトも含めてシステムを構築する必要も出てくるでしょう。

そういった場合は、是非、Pro Tools HDシステム・インテグレーターまで、ご相談/お問い合わせください。

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