ガレス・オーウェン、S6Lで『ブロンクス物語』をブロードウェイへ

By in ライブサウンド

2度のアカデミー賞受賞俳優ロバート・デ・ニーロと4度トミー賞を受賞したジェリー・ザックス監督による『ブロンクス物語』(原題:A Bronx Tale)は、ロングエーカー・シアターで初日を迎えました。『ブロンクス物語』をブロードウェイのステージへ上げるまでの制作について、同作品のサウンド・デザイナー、ガレス・オーウェン氏にお話をうかがいました。ローレンス・オリヴィエ賞に輝き、トニー賞には幾度もノミネートされているオーウェン氏には、新しいAvid VENUE | S6Lライブシステムへの移行について、また、パワフルな制作において、同コンソールの幅広い機能がどのように活用されているのか等についてお話いただきました。

サウンド・デザイナー、ガレス・オーウェン(S6Lの写真は、全てEyesounds PhotographyのKal Dolgin撮影による)

DH: 『ブロンクス物語』は、今年の始めにニュージャージーのペーパーミル・プレイハウスで初演を迎えましたが、ブロードウェイに移るにあたって、どのような変更がありましたか?

GO: ニューヨークの外で試験的に興業するのは、何が有効で、何がそうでないかを試すためです。ペーパーミルの後、全体的に細かい変更を数多く行いました。ほとんどは、脚本や歌曲の手直しし、新たなキャスティング等ですが、磨きを増してエキサイティングな舞台になりました。

DH: ご自身の側ではどのような変更がありましたか?

GO: 大きな変更の1つが、サラウンド・サウンドを止めたことです。必要のないことにクライアントのお金を使わないというのが、私のポリシーです。ペーパーミルでの公演では、必要になる可能性があるもの全てをカバーするために、フルシステムのサラウンド・サウンドを使用しました。しかし、実際は、ペーパーミルでは・サラウンド・システムをほとんど使用することがありませんでした。そこで、ブロードウェイでは、サラウンド・システムを使う必要が無いように、サラウンドを使用した部分を作り直しました。

当初は、ペーパーミルでS6Lを使用するつもりでしたが、実際、使う段になって、S6Lが、『ブロンクス物語』のような複雑な公演にまだ対応できないことが分かったので、Profileで行くことを決めました。初演においてS6Lの使用を断念した2つの大きな理由の1つが、Stage 64ラック×3基のサポートです。S6Lがリリースされた当初のソフトウェアでは、2基のステージラックしかサポートしていませんでした。もう1つの理由は、パラメータの幾つかが、VNCソフトウェアからリモートで調整できなかったことです。この点について、Avidに伝えると、すぐに修正してくれました。その後、ブロードウェイでS6Lを使用する際には、(Profileから)VENUEショーファイルを開いて、ほとんど問題なく、新しいデスクへ直接転送することができました。これは、言うまでもなく、とてつもなく有益でした。

DH: 同制作では、スナップショットをどのくらい使用していますか?

GO: 380位だと思います。38本のワイヤレスマイクを扱うためには、VCAをコンスタントに再プログラムしなければならないということと、誰かが話している時にだけマイクがオンになるという劇場のプログラミングの方法から、そのような数になっています。サウンド・オペレーターとしての立場から言うと、膨大な量のプログラミングとオペレーションが要求されます。

DH: 同制作では何チャンネル必要でしたか?また、I/Oの構成は?

GO: 192チャンネルのうち、15程度の空きチャンネルがあったと思うので、使用しているのは、約180チャンネルです。新しいMADIカードにより、MADI入力カードから直接、全てのショーのコントロール再生をトラックと音響効果付きで行えるようになりました。フル装備のステージラック3基は、それぞれ入力64チャンネルに加えて、ラック1とラック2にはAES出力カードを、ラック3にはアナログ出力カードを搭載しています。

FOHサウンド・エンジニアの Dave Horowitz

DH: VENUEや他のコンソールでは、長年にわたる豊富な経験をお持ちですが、S6Lにはどのような利点がありますか?

GO: あらゆるものをサーフェスにマッピングできることと、サーフェスがとても柔軟なことです。必要に応じて、どうにでもなります。プラグインを含み、エンコーダーやカスタム・フェーダー・バンクに何でも思い通りに呼び出せるのは、実に画期的です。これほど見事に、あるいは効果的にできるものは他にありません。さらに、サーフェスへシームレスにマッピングできるのはAvidのプラグインだけではありません。標準のPro Toolsと周辺機と併用するためには、AAX DSPプラグインに組み込まなければならないという基本的構造から、サードパーティ製プラグインも同様に行うことができます。私は、McDSP とSonnoxプラグインを多用しますが、目の前のエンコーダーにリバーブの全パラメータを即座に配置することができます。本当にパワフルです。一度、使い方のこつを覚えれば、後は、オンザフライで、素早く簡単に変更できます。

S6Lでは、“レイアウト”機能を使い、サーフェスにはサーフェスからみて合理的な位置にフェーダーを配置します。入力は、スクリーン上で合理的な位置に配置します。それから、レイアウト機能を使って、デスク上で合理的な位置にフェーダーを配置します。つまり、両方に最適な状態にすることができます。これは、旧型のコンソールからは大きな進歩です。旧型のコンソールでは、スクリーン上で合理的な位置に配置するか、サーフェス上で合理的な位置に配置する、または、両方の妥協点を探して配置するしかありませんでした。ドロップ・グループやAUXセンド等を入力として同じレイアウトに配置できるのも、大きな利点です。全ての男性ボーカルを1レイヤーに、男性ボーカル・グループを同じレイヤーに置くなどということができます。さらに、男性用のリバーブ・センドを同じレイヤーに置き、グループEQを調整、誰にリバーブがかかっているかをチェックする等、あらゆることを1つの場所から行うことができます。

DH: その点について、もうすこし詳しくお話しいただけますか。数多くのスナップショットでVCAへの割り当てをおこなっていますが、カスタム・フェーダー・レイアウトはスナップショットからのみ使用していますか?それとも、デスクで作成し、スナップショットに直接適用されないレイアウトを使用しますか?

GO: 機能性とレイアウト1だけがスナップショットで記録されるという点を活用しています。レイアウト2から24は、デスクの正しい場所に正しいものを置く手段として使っています。 例えば、“ドラム”、“パーカッション”、“リバーブ”、“ブラス”というレイアウトを作ります。そうすれば、それらの楽器に関するあらゆるものや人を同じレイアウトに置くことができます。

1レイヤーにギターだけでなく、ギターのリバーブ・リターン、ギター・グループ、その他ギターに関連するあらゆることを全てまとめて置くことができます。その上、スナップショット毎にプログラム可能なレイアウト1は、公演でオペレーターが特定の合図を受けた時に、役に立つものをドロップする場所として使用します。例えば、2台のサックスが交互にラインを演奏する楽曲があり、そうすることで競い合うような場合、2台のサックスをミックス・レイアウトにドロップするだけで、オペレーターは、公演中、その瞬間に必要なものを素早く手に入れることができます。ヘビーなギター・プッシュが必要な楽曲では、リード・エレキ・ギターをレイアウトにドロップすれば、素早くギターを選び、プッシュを加えることができます。

 

DH: システムのパワーについてお伺いします。Profileから進化しているのは明らかですが、新たなパワーにより可能になったことはありますか?

GO:以前は、ハードウェアやソフトウェアの制約から不可能だったアイディアも探究できる十分なプロセッシングパワーが搭載されて、本当に嬉しいです。以前は、「ドラムとパーカッションに同じドラム・ルーム・エンジンではなく、パーカッション演奏者用に別のドラム・ルームがあったらいいのに」と思っても、出力バスの制限、AUX不足、出力不足から、なんとかできないかともがきながらも、いつも、妥協せざるを得ませんでした。新しい出力構造では、使いきれない程のAUXがあります。自由に使える空の入力系統があります。「マイクを1本追加したらどうだろう?こんなことをやってみたい。」今では、自分の創造的アイディアをさらに深く追求ためのリソースを手に入れたようです。

制作現場では、S6Lがとても小さなデスクであることから、誰もが、100%気に入っています。S6Lのパワーを見た時、本格的ミュージカル『ブロンクス物語』の規模からすると、ブロードウェイ最小のPAです。サウンド・オペレーターと機器を含んで8席を占有します。ブロードウェイの劇場でたった8席です。制作が喜ぶことは間違いありません。

DH: S6Lが制作にもたらした音質についてお聞かせください。

GO: 一番良い例は、舞台は大規模なアンサンブルシーンから始まるのですが、初めて観客を入れて演じた時、サウンド・オペレーターがステージ・マネージャーから青信号を受けて、VCAを+3、+4といった具合に上げました。その瞬間、私たちは、顔を見合わせて、「PAはまだミュートしてる!」と一種のパニックに陥りました。私はシステム・コントロールへ飛び、「PAはミュートしてない?!」と混乱しました。すると、オーケストラの音がシステムから飛び出しました。巨大なd&b PAシステムで+3、+4とあげれば、通常、一般的なヒス雑音や同様の雑音等、暗騒音が聴こえてきます。

しかし、何も聞こえなかったのです。一切の暗騒音がなく、私たちはパニックしてしまいました。本当にクリアで、何の音もしなかったのです。もう1つ、興味深い例としては、マイクの選択があります。長年にわたりお気に入りのマイクを選んできました。「これには、このマイクが最適。これにはこのマイク。」と。長い間、トランペットやトロンボーンに最適だと思っていたマイクの選択が、突如、「このマイクは、思っていたほどクリーンじゃない」と気付いてしまいました。今では、このマイクとあのマイクの違いがはっきり聞こえるのです。信号パスがとてもクリーンでクリアなため、以前には気付かなかった信号パス内の全ての不備に気付きはじめてしまいました。S6Lは、とても透明でクリーンで、今までには気付かなかったものも明らかにしてしまうため、信号パスの中で思っていたほどクリーンでもクリアでもない部分を探し始めてしまいました。

チームメンバー(左から右へ):Scott Kuker (デッキ・サウンド・エンジニア), Chazz Palminteri (『ブロンクス物語』著者), Gareth Owen (サウンド・デザイナー), Dave Horowitz (FOHサウンド・デザイナー), Josh Liebert (アソシエイト・サウンド・デザイナー), Mike Terpstra (デッキ・サウンド・エンジニア)、+写真に写っていないWallace Flores (プロダクション・サウンド)

DH: 現在、他には、どのような制作でS6Lを使っていますか?

GO: イギリスでツアー中の新しい大型ミュージカル作品『たのしい川べ』(原題:Wind in the Willow)は、2017年5月に、ロンドン・パラディウムで開幕します。また、『Come From Away』は、S6Lに移しました。このミュージカルは、トロントで開幕したところです。2月には、ブロードウェイでオープニングを迎えます。

その他、2017年前半にロンドンで2つの舞台が始まります。両方ともS6Lで行います。1つは、ローリング・ストーンズのプロモーターであるマイケル・コールがプロデュースした新しいミートローフのミュージカル『地獄のロック・ライダー』(原題:Bat Out of Hell)です。とてもとてもシリアスなショーです。それから、『42ndストリート』でもS6Lを使用します。これは、80本のマイクを使用する大型作品です。2017年6月には、ロンドンのウェスト・エンドの3つの大劇場で、私たちのショーがかかることになります。ロンドン・コロシアム『地獄のロック・ライダー』、ロンドン・パラディウム『たのしい川べ』、ドルリー・レーン『42ndストリート』、全てAvid S6Lで行います!

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ライブ・サウンドのネクスト・ステージがここに―賞に輝くVENUE | S6Lなら、世界で最も要求の厳しいライブサウンド・プロダクションも簡単に扱うことができます。

詳細
Avidライブサウンド・システム及びノーテーション・シニア・マーケティング・マネージャー。 以前はEuphonixとE-MUシステムで働いていた経歴を持つ。