Sundance Film Composer Lab at Skywalker Sound

By in オーディオ, 記譜

私は数週間前にSkywalker Sound(スカイウォーカー・サウンド)のオーケストレーターと写譜のアシスタントをしていました。Skywalker Soundは世界的に有名なレコーディングスタジオ、ポストプロダクション施設であり、サウンドポストプロダクションの中心地であり、さらには大ヒット映画や人気ゲームの音楽レコーディングを手掛けています。Skywalker Soundはサンフランシスコ北部の丘、美しい田舎町であるマリン群に隠れた、めったに訪れることのできない場所にあります。そこで仕事ができた私は、実に幸運な1人です。

 

きっかけはSundance Film Composer Lab(サンダンス・フィルム・コンポーザー・ラボ)でした。The Sundance Film Festival(サンダンス映画祭)は、アカデミー賞受賞俳優であり、ディレクター、そしてプロデューサーであるRobert Redford(ロバート・レッドフォード)によって設立された独立した映画祭としてよく知られています。この映画祭は、2000年初期からFilm Music Composer Lab(フィルム・ミュージック・コンポーザー・ラボ)を通して有望なフィルムコンポーザーを売り込んでいます。Peter Golub(ピーター・ゴラブ)率いる6人の作曲家(仲間と呼んでいた)と6人の映画ディレクターのチームは, Skywalker Soundにオーケストラを呼び、最大5分の映画用の2曲のライブレコーディングを行うことになりました。

 

ワクワクすると同時に高度な緊張を要する環境で、作曲家たちが締め切りまでにすべての曲を完全に仕上げなければならないという大変な時間との戦いを強いられるハリウッド映画音楽界に似ています。水曜日に仲間たちは楽曲を受け取ります。その後、彼らは土曜日までに曲を書き、MIDIの試作を終え[バーチャルインストゥルメントやシンセサイザーを用いて、生の楽器のようにコンピューター上で音楽制作を行います。最近の映画音楽作曲家の仕事の方法です]、ディレクターから承認を得て、今年の計画の指導をしているハリウッドのベテラン作曲家Laura Karpman(ローラ・カルプマン)の指導を受け曲を書かなければなりません。作曲家たちは土曜日の正午までにMIDIのデータをリードオーケストレーターであるMarco d’Ambrosio(マルコ・ダンブロシオ)と自分自身に手渡さなければなりません。ここから楽しくなってきます。土曜日の午後から日曜日の朝までの間に、総計で最大30分になる約11個の楽案をオーケストレーションしました。

 

30分と聞くとたいした事のないように聞こえるかもしれませんが、24時間以下で終えるには大変な仕事です。26人編成のオーケストラ(flute – oboe – clarinet – bassoon – two horns – harp – 6 first violins, 6 second violins, 4 violas, 2 celli, one double bass)のために、すべてがフルオーケストレーションされなければなりません。ちょっとしたミスを許す時間的余裕はなく、間違えることはできません。プレイヤーは午前10時から午後1時と午後2時から午後5時の間におさえてあります。時間のずれは1分も許されません。彼らはトップレベルのプロフェッショナルであり、リハーサルなしに初見演奏をします。全ての音は、スコア、パート譜、そして開始位置に対して正確に演奏されなければなりません。私たちもダイナミクスや特殊な技法を書き上げる以前に、適切なフレーズを、それに適した楽器、あるいはグループに確実に割り当てる必要があります。

 

スコアとパート譜は映画音楽のしきたりに従って、的確にレイアウトされている必要があります(例えば、巨大な拍子記号表示、演奏のない箇所での楽器群の楽譜表示、スコアや全パートの”free clicks”表示、全てはクリックトラックに沿って録音されるため)。私はPhilip Rothman(フィリップ・ロスマン)の素晴らしいブログTim Davies(ティム・デイビス)のウェブサイトを参考にしています。そして、伝統的な映画音楽の清書は別として、覚えておくべき鉄則がいくつかあります。

 

  1. すべてがクリックトラックに沿って録音されます。映画音楽はシーンに沿って作曲されているので、MIDIで曲を受け取ったとしても、拍子記号やテンポを変えることはできません。受け取ったPro Toolsセッションはコントロールルームと並行してアップロードされており、指揮者とミュージシャンに聞かせるために、ビデオとクリックトラックが再生準備されています。もし、4/4拍子でオーケストレーションした曲で、指揮者とミュージシャンが3拍子のクリックを聞いていたら気持ち悪いですよね?

 

  1. 先に述べたことに深く関連しており、すべての映画音楽に共通して言えることですが、曲は映画中の特定のシーンや厳密なタイミングに対して書かれます。そして、これらは普通、事前にレコーディングされたトラック(synthesizer, piano, vocals)、そしてコントロールルームで再生されていたPro Toolsトラックも含めて同様です。映像に対する曲のタイミングを変えてしまうと、せっかくシーンに合わせて慎重に書いた曲とシーンを、わざわざ切り離さなければならなくなってしまいます。曲とシーンを切り離してしまうと、曲はもはや映像と共に機能しません。これはもう一つの絶対にやってはいけないことです。

 

  1. 一般的に作曲家の意図は可能な限り尊重し、意見や指導を受け入れます。

 

具体例を挙げるとすると、カナダの素晴らしい作曲家であるAmritha Vaz(アムリサ・ヴァズ)の5分1秒の曲があります。これは最後に受け取った曲の1つです。初めのうちは、1曲だけしか入れないつもりでした。しかし、彼女は土曜日の午後に気が変わり、追加でもう1曲オーケストレーションできるか私たちに尋ねました。彼女は”変わった要素”が欲しいと言いました。それによって不安感を暗示できるかもしれない、特殊なオーケストラの効果を狙ったものです。我々は快諾しました。そして、日曜日の朝にMarcoは次のように仕事を依頼しました。

 

曲はPro Toolsフォーマット(マスタートラックと個々のトラックを含む)で送られました。それをAA Translatorを使いReaperセッションに変換し、Pro toolsからエクスポートしたMIDIトラックを追加しました。Reaperのセッションはこのように見えます:

レンダーされたオーディオトラックだけでなくクリックトラック、ミキサー、クロック表示、そしてマスタートラックまで確認できます。もちろん、トラックをソロにすることもミュートにすることもできますし、再生位置を自由に変えることもできます。さらに、このセッションを聞くだけでAmrithaの考えている音楽的アイデアを正確に捉えることもできます。とても効率的です。

 

Pro Tools内の同じ曲と比較すると、レイアウトの違いはあるものの機能性は実質上同じです。

Sibeliusは多くのプラットフォーム上で快適に動作します。MarcoはMacでSibelius 7.1を使っていますが、私はPCユーザーで、最近8.4.1にアップグレードしました。私とMarcoの使っているSibeliusのバージョンは異なりますが、ファイルのやり取りに問題はありませんでした。 私はSibelius 7用にファイルをエクスポートし、それをUSBメモリでMarcoに渡しました。ファイルには様々な曲やバージョンがあり、さらには新しいものから古いものまでありました。ファイル名は命名規則に従ってわかりやすくつけなければなりません。そして、SibeliusとPro Toolsで扱う様々なファイルをすべてわかりやすく管理しなければなりません。

 

Sibeliusなら1つのファイルですべてを管理することが簡単にできます。スコア、パート譜、あらゆるものが自由自在で、あらゆる楽譜スタイルにも対応します。これらはたった数分で変えられる上に、スコアやパート譜をプリントアウトすることもできます。とても機能的です。Sibeliusのダイナミックパートならスコアとパート譜を同期しておくことができます。そして、マグネティックレイアウトは特別な操作なしに美しいスラーを描くことができます。とても機能的です。

 

想像してみてください。もしすべてを手書きで原稿用紙に書かなければならないとしたら、どれだけの時間、どれだけの努力をしなければならないか…とても大きなチームでなければそんなことはできません。

 

Musical Challenges – Part I

 

次は作曲です。この特別な曲のために、MIDIファイルをSibeliusで読み込むと、このように表示されます:

 

この画面を見てこう思うかもしれません”なんなんだこれは”!?と。こんなものをオーケストラに渡したくないでしょう。私もこんな譜面をオーケストラに渡したくありません。しかし、Marcoと私がいます。私たちはすべてきれいに整理し、いくつかの個所を修正し1、2時間後にはこのようになります。

断然よくなったでしょう?

 

とても機能的な環境です。最初のテイクの後、Lauraはコントラバスプレイヤーに1オクターブ低く演奏するように頼みました。ダブルベースの音域はlow Cに拡張してあるので技術的に可能です。決められているわけではないのですが、プロフェッショナルなプレイヤーたちは通常そのようにしています。その後、木管楽器、弦楽器すべてを割り当て直しました。少なくとも木管楽器のうちの1人はB♭ Clarinetに移調したので、パート譜を印刷し直さなければならなくなりました。さらに、 second violinsの“col legno”は、このオーケストラのダイナミクスの中では効果的ではなかった(音勢が弱すぎる)ので、Lauraはsecond violinsにarcoで演奏できるかどうか尋ねました。

 

パート譜の作成、印刷、そしてスコアの作成、そして駆け足でのレコーディングまで、すべてが混沌とした制作環境で行われました。

 

Musical Challenges – Part II

 

もう1つの実例は、4分1秒の別の曲から、Morgan Kibby(モーガン・キビー)のAfronautsです。Lauraは木管楽器に、指定された三和音を自由なリズムで演奏してほしいと要求しました。私は全く文字通りに受け取り、このように書き出しました。素晴らしいでしょう?そう思いませんか?

ただ、問題なのは、木管楽器奏者が、自由なリズムによる三和音の演奏方法を最もよくわかっているということです。苦言を呈するなら、細かく管理しようとしすぎています。プレイヤーたちはクラシックの訓練を積んでおり、どんなものでも提示すれば演奏することを覚えておいてください。このように彼らに任せたほうがいいでしょう。:

木管楽器奏者への提示や録音はこのようにおこなわれました。

 

Tips

 

すべてのソフトウェアとハードウェアが起動し、稼働していることを確認してください(ケーブル、ヘッドフォン、iLokからスクリーンモニターまで)。

 

メモ帳、原稿用紙、予備のペン、特にElaine Gould著の「Behind Bars」もお忘れなく:)

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私は、カリフォルニア州オークランドを拠点に、作曲、オーケストレーター及びサウンド・デザインを手がけています。さらに詳しくは、www.summeroflovemusic.com をご覧ください。