TBSテレビ、2K番組編集後から4K番組編集をMedia Composerで実現

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TBSテレビは、毎年12月のクリスマス時期にシンガーソングライター・小田和正氏がメインアーティストの音楽番組「クリスマスの約束」をTBS系列の地上波で放映している。「クリスマスの約束」は、毎回様々なゲストを招き、良質な音楽を視聴者に届ける狙いの音楽番組で、通年一回の放送にも関わらずTBSを代表する音楽番組とも言われている。4Kの音楽番組のニーズは高いものの、権利や費用の問題で音楽番組の4Kコンテンツの実現は困難と言われていたが、2016年の「クリスマスの約束」では初めて2Kと4Kの同時収録と4Kの番組制作が行われた。今回の地上波の番組とコラボする形で実現した2Kと4Kのサイマル番組制作のワークフローについて、テクニカルマネージャーとして活躍したTBSテレビ 技術局 制作技術統括部の近藤明人氏と、歌編集部分と本編の4K化を担当したTBSテックス 現業本部 技術営業部 営業担当 兼 ポスプロ事業部 編集担当の礒辺宏章氏に話を伺った。

TBS テレビ近藤氏、TBS テックス磯辺氏

TBS テレビ 技術局 制作技術統括部の近藤明人氏(右)、TBS テックス 現業本部 技術営業部 営業担当 兼 ポスプロ事業部 編集担当
の礒辺宏章氏(左)

国内でも例を聞かない2Kの番組から4Kの番組制作ワークフロー

「クリスマスの約束」の4K番組制作の特徴は、地上波の2Kコンテンツありきでその後に4Kコンテンツの順番で作られたところだ。通常、2Kと4Kのサイマル番組制作では、4Kのコンテンツを先に完成させて2Kへのダウンコンバートによって実現するのが一般的だが、「クリスマスの約束」はまったく逆の考え方だ。2Kコンテンツの時間軸が完全に成立したうえで4Kコンテンツを成立させるという国内初の事例といっていいだろう。礒辺氏は収録から地上波の放送まで1週間しかなく4Kを先に作る時間がなかったと言い、近藤氏は2Kと同じものを4Kで作ることで4Kにかける費用を可能な限り抑えたかったことや、ディレクターによる再編集の必要もないという利点を語った。「このワークフローが確立できれば今後4Kコンテンツがいろんな形で制作できるのではないかという検証も兼ねて行いました」とも近藤氏は語った。

 

2Kの編集結果を4Kのオフラインとして使えて、エフェクトやカラコレ、音声を引き継げる

2Kから4Kの番組制作というのは具体的にどのようなワークフローだったのか。まず、アビッドのMedia Composerで通常の2Kの番組制作を収録から1週間で完成させて12月23日に地上波で放送。年が明けて4Kの番組制作もそのまま同一アプリケーションのMedia Composerで作業を行う。4Kの番組制作でもMedia Composerを選んだ理由は、2Kの完パケした編集結果を4Kのオフラインとして使えたり、エフェクトやカラコレ、音声のデータのもそのままスムーズに引き継げるのが理由とのこと。「基本的に編集時間を短縮して4K化しようという試み」と礒辺氏は話す。

 

番組作成時のシステム構成図

番組作成時のシステム構成図

音声やエフェクトデータやテロップタイミングに関しては、4Kのタイムラインにシーケンスデータを移動するだけで流用ができた。音声は、HDの音完パケをPro ToolsからWaveファイルとして書き出し、それをそのまま4K側で転用。再MAを一切しないでWaveファイルを貼り付けただけで完結できた。近藤氏は、「再MAを覚悟していましたが、貼り替えだけで4Kに対応できました。4Kコンテンツ制作の音声の費用増はゼロです。これは非常にありがたかったです」と絶賛した。

エフェクトデータに関しても、HDからのエフェクトデータは4Kに移動するだけでそのまま適用できた。「2K編集・4K編集で異なるアプリケーションを使用するとエフェクトの再現性が失われてしまいますが、エフェクトデータを移動するだけで簡単にエフェクトが移行できたので大変に助かりました」と礒辺氏。

テロップに関して、2Kの制作時には「Deko」や「PostDeko」を使用したが、それらの製品は2014年に販売終了しており、4Kの番組制作では使用できない。そこでDekoのテロップを静止画に変換し、北海道日興通信株式会社のテロップ作成ソフトウェア「Telop Canvas」で読み込み、自動で4Kにスケールアップする機能を使用して4Kのテロップを制作。タイミングはHD編集時に決まっているので、そこに貼り付けていく単純な作業だけでテロップ入れの作業は済んだという。

ちなみに、テロップ制作に使い慣れたDekoを現在でも使っているという現場は今でも多いが、Media Composerの最新版には4K対応の別のテロップソフトが搭載されている。使われている事例はまだ少ないが、シンプルなテキストならば標準搭載のテロップ機能でも十分対応が可能だろう。

Media Composerで編集作業をする磯辺氏

NEXIS導入で今後は4Kの並行作業が可能

4K番組制作の課題は大容量化する素材の管理だ。特に「クリスマスの約束」の収録はソニーの4K/HDシステムカメラ「HDC-4300」を10台と、CineAlta 4Kカメラ「PMW-55」を一部に使い、合計14台のカメラで収録。そのために収録された素材のハードディスクは15台にもなった。では、この数多くのハードディスクの4K素材をどのように管理をしたのだろうか。「クリスマスの約束」の制作当時、TBSテックスには編集共有サーバーとして「Avid ISIS | 5500」を導入しており、HDの番組制作はこちらのサーバーを中心に運用していた。素材サーバーとしてUSB3.0接続の市販ローカルディスクの16TBを2台、編集サーバーとしてThunderbolt2接続のローカルディスク64TBを用意してローカル運用という形で行われた。礒辺氏は、「収録素材は4Kになると素材量が膨大になり、15台のハードディスクの素材を素材サーバーにコピーをするだけでも1日がかりの作業になりました」と振り返った。そのあたりはテープのワークフローとは違うと感じたと言う。

TBSテックスでは「クリスマスの約束」の4Kコンテンツ完成後に「Avid NEXIS」を導入。「今後は共有サーバーに4K素材を置いていろんな部屋から並行して作業を行うことができるようになります」と礒辺氏。4Kでも並行作業が可能になり、作業効率は向上するだろうと期待を語った。

Avid NEXIS

Media Composerで編集作業をする磯辺氏

HDRを使った番組制作も検討

2016年度の「クリスマスの約束」ではHDRでの収録は見送られたが「今後はHDRを使った番組制作も検討していく」と近藤氏。「音楽番組でHDRというのは、コントラストよりも色の見せ方の部分で非常に表現力が上がるのではないかなと思っています」と話す。

礒辺氏はHDRを使った際はカラーグレーディングが課題になるだろうと見通しを語った。HDRで収録を行うということはカラーグレーディングの工程がポストプロダクションに加わる。カラーグレーディングは編集とはまったく異なる業務なので、エディターがグレーディングを兼任することは非常に難しいと感じている。

「うちでも役割分担を模索しているところで、エディターとカラーリストでは作業内容が大きく異なります。今専属の人を育てたり担当を作って進めているところです」と話す。

最後に礒辺氏は「Media ComposerはBT.2020の色域にも対応しており4Kのプロジェクトの編集が可能です。おそらくMedia ComposerでHDの編集をやっていた方であればわりとスムーズに4Kの番組編集ができるのではないかと思います」と話す。ここで紹介した2Kから4Kの番組制作ワークフローは誰もがまったく想定をしていなかった工程といえるだろうが、話を聞いてみると「それはそれでありなのかな」とも思えるのではないか。4K番組制作を考えている方はぜひ参考にしてほしい。
(レポート:PRONEWS http://www.pronews.jp/)