The Rough Cut:『キャプテン・マーベル』エディター デビー・バーマン

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Avidのシニアディレクター  マット・フューリーがトップエディターにインタビューするポッドキャスト「The Rough Cut」、今回のゲストは、『キャプテン・マーベル』の編集を手掛けられた、素晴らしい(Marvel-ous)マーベル・エディターのデビー・バーマン(アメリカ映画編集者協会)です。公開イベントで収録されたこのインタビューで、デビーは現在のポジションにたどり着くまでの忍耐と粘り強さについて話してくださいました。またこの世界で仕事をしていく上での鍵となるアドバイスもお聞きしています。

映画にかける情熱があふれるインタビューをお楽しみください!

ポッドキャスト全体は以下からお聞きいただけます。(英語)

マット:デビー、ようこそ。今日はお越しいただきありがとうございます。

デビー:こちらこそうれしいです。皆さんお越しいただきありがとうございます。

マット:作品はかなりの成功を収めていますね。

デビー:ええ、素晴らしいことです。

 

マット:あなたがマーベル作品に参加するのはこれが初めてではありませんね?すでにしばらくの間関わっていらっしゃいます。マーベルの仕事をするようになったきっかけと、これまで関わった作品について少しお話しいただけますか?

デビー:もちろんです。初めて取り組んだマーベル作品は『スパイダーマン:ホームカミング』です。この作品に参加するのが一番大変でした。当時はまだ経験も信用もなかったので。この業界はとても競争が激しい世界です。師匠のひとりであるダン・レーベンタールが『スパイダーマン…』に参加していて、私を推薦してくれたんです。それでも厳しかった。たくさんの「ノー」をもらいました。相当な数です。そのとき私が頭に置いていたのは、とにかく「ノー」は会話の一部分に過ぎないということです。皆が私に「ノー」を突きつけてくる中、私はこう考えていました。「最高!だって皆、私が『スパイダーマン…』に参加するかどうかについて話しているんだから」。もちろん、「ノー」なんですけど、でもそれは会話の一部でしかない。重要なのは、私が『スパイダーマン…』に参加するかどうかについて話し合っているってことなんです。とにかく、私はスパイダーマンについてありとあらゆることをグーグル検索し、そのデータを基に、自分がこの仕事にぴったりな人材なのだという理由にしたんです。全くの無名だったにもかかわらずね。その情熱が彼らに伝わり、私にチャンスをやろうということになったんです。こうしてスパイダーマン作品に参加することになりました。

 

マット:ダン・レーベンタールと出会い、親交を深め、彼と一緒に仕事をすることになり…十分経験はあったのだと思いますが、ダンはあなたのことをエディターとしてどう見ていたと思いますか?あなたに仕事ができると感じていたのでしょうか?

デビー:それはダンに聞くべきでしょうね。ただ、彼は数年にわたって私の良き指導者だったので、私の熱意については理解していたと思います。私が映画作りに全てを捧げていることを知っていました。自分のルールとして、絶対に仕事をねだったりしないと決めているんです。業界のお偉方といった人たちと仕事をする場合は特に、みんな何かをお願いしてばかりにいるようにみえます。私はそうはなりたくないと思いました。私がやっているのは、自分がやりたいことを常時はっきり言葉にして伝え、私に手を貸してくれる人の耳に入るようにすることです。こうすれば、私に手を貸すかどうかは相手次第になります。だからあのときも、(レーベンタールに)いつかマーベルで彼と一緒に仕事をしたい、それは私の大きな夢なんだと伝えていました。私達は何時間もストーリーについて話しをしていたので、適切な機会だと感じたときに私の名前を出してくれたんだと思います。

ある小規模インディー映画で一緒に仕事したこともありました。彼はポール・シュレイダーが書いた作品に関わっていたのですが、マーベルでの仕事に手を貸すために抜けなければならなかったんです。それで私にチャンスをくれました。「このインディー映画を引き継いでくれるかな?私がマーベルで仕事している間、ディレクターズカットをやるだけだから」と言って。それで参加することになったとき、少し大胆になろうと決めたんです。思い切ってやってみようと。強引過ぎると思われるのではないかとビクビクしていたのですが、ダンは、私がストーリーを語ろうとしているのを見てとても喜んでくれました。それに、私の仕事を気に入ってくれたようです。また、私たちは気が合うんですけど、それもこの業界ではとても重要なことだと思います。この仕事では、1年あまりにわたって同じ人々と顔を突き合わせて仕事をします。疲れるし、ストレスもたまります。仕事仲間が、あなたのモチベーションを上げてくれる人なのか、下げてしまう人なのかは重要なポイントです。それに、ベースに友情や共通の興味があるというのは大きな助けになると思います。

 

マット:『スパイダーマン…』に参加した際、「ここに関わりたい」と伝えたストーリーの特定の部分や事柄はあったのですか?

デビー:『スパイダーマン…』で私にとって重要だったのは、この業界にはある不名誉な徴候があるということ――女性エディターはアクション映画の大がかりなアクションシーンのシークエンスをカットできないという烙印が押されているということです。それを壊そうと努力することは、私にとって非常に重要なことでした。そういうわけで、私は『スパイダーマン…』のアクション・エディターを務めました。アクションシーンのほとんどを私が手がけました。女性に対する認識を打ち破るためにできるだけのことをすることが重要だと感じたのです。

 

マット:すでに話に出ましたが、この次にとりかかったのがマイケル・P・ショーヴァーとの『ブラックパンサー』でした。監督はもちろんライアン・クーグラー。マイケルとライアンは映画学校時代からの長い付き合いで、その後『フルートベール駅で』や『クリード チャンプを継ぐ男』でも一緒に仕事をしています。2人は『ブラックパンサー』までに気心が知れた間柄になっていて、すでに何作も一緒に仕事をしているからこそのスピード感が確立されていたわけですが、そこにどうアプローチしたのですか?自分を見失わず、どうやって彼らの世界に溶け込んでいったのですか?

デビー:少し及び腰でした。2人は映画学校時代から一緒ですし、ある意味二人三脚でここまでやってきたわけですから。『フルートベール駅で』は素晴らしかったし、『クリード…』も最高でした。『クリード…』は、私、本編中のほとんどで大泣きでしたから。とはいえ、二人の仕事ぶりがどのような感じなのか分からなかったし、よそ者のように感じるんじゃないかと心配していました。でも、ライアンもマイクもそれは本当にも素晴らしい人でした。一緒にランチをしたんですが、即座に親近感を感じることができました。3人とも出身もバックグラウンドも全く異なりますが、映画への愛、特にこの作品への愛という点は共通していました。私は南アフリカ出身なんですが、だからこそこれは私にとって大事なことでした。映画への愛が私たちをひとつにし、同じ目標に向かわせてくれたのです。

初日にマイケルがやって来て、単刀直入にこう言ったんです。「いいかい。知っておいて欲しいんだけど、君は僕たちと同じ共同作業者なんだから、この作品にしっかり関わって欲しいんだ。君の意見を尊重するからね。」 彼らにとってもこのコラボレーションは有益だったと思います。私はそれほど大作に参加したことがなかったし、2人がキャリアを積んだ頃のことを知りませんでした。インディペンデント映画の世界からやって来たばかりだったのです。だから、彼らの知識のギャップがどのようなものなのか理解できました。私は『スパイダーマン…』を終えたばかりだったので、2億ドルの映画制作に参加することにで得られる経験値というものを知っていたからです。だから、どういったデータが彼らにとって有用なのかを予想することができました。

 

マット:『スパイダーマン…』ではアクションのシークエンスを重点的に手がけたとのお話でしたが、『ブラックパンサー』ではどうでしたか?また、マイクとの仕事はいかがでした?前作とは違う役割も担当されたのでしょうか?

デビー:『ブラックパンサー』には、制作がスタートして数カ月経ってから参加しました。素晴らしかったのは、新鮮な視点が得られたことです。私以外のスタッフはすでに数カ月から数年にわたって脚本にかかりきりで、全映像を見終わっていました。彼らの頭にあったのは以前のカットから得られた情報です。

一方、私は予備知識のない状態でこの作品を映画として観ました。なので、分かりづらい部分、冗長に感じる部分、情報の繰り返しになっている部分にすぐ気づくことができました。『ブラックパンサー』での私の主な仕事は、ある意味「全体的な合理化」を行うことでした。見せたい場面が明確になるよう、場面がきちんと展開するようにすることです。この映画は登場人物が多いので、各登場人物のストーリーがしっかり語られつつ、あまりにも話がそれて作品全体の流れが妨げられないよう時間配分する必要がありました。そんなわけで、アクションシーンもやりましたが、大部分はマイクが担当しました。

 

マット:ライアンは比較的若手の監督ですが、すでにかなりの成功を収めています。彼との仕事で得たこと、学んだことは何ですか?

デビー:彼は素晴らしい人です。本当に、映像作家としても最高なんですが、人間性がそれ以上に素晴らしい。とにかく誠実で心の温かい人なんです。ライアンは、まるで彼と私の二人で作品を作っているような気持ちにさせてくれます。あらゆる意見に対してオープンで、全てのシーンに対する責任を持つのは自分なのだと感じさせてくれます。誰に対してもそうなのです。それでも、私だけ特別だと思わせる、特別な才能が彼にはあるのです。

この作品ではすべての部門が素晴らしい仕事をしていますが、それは、忌憚のない意見に対して扉が開かれていて、全員が全身全霊を込めて良い仕事をすることができたからです。彼は、率直な意見を求めます。皆がどう思っているのか、どう感じているのを知りたがります。彼は映画作家としての直観力をもっていて、皆に耳を傾け、どういったときにその意見を取り入れるのか直感で判断することができるのです。クルーなら誰でも話し合いに参加し、作品に意見を出すことができます。プロダクション・アシスタントはスタジオの序列的には下っ端ですが、ライアンは彼らの意見を聞きたがりました。彼らは作品に対する独特の視点を持っているからです。違ったアングルから作品を見ているから。『ブラックパンサー』にはプロダクション・アシスタントから出された素晴らしいアイデアが取り込まれていますが、それは彼らにも扉が開かれていて、貢献するチャンスがあったからです。

 

マット:ライアン・クーグラーと仕事し、彼から意見を求められたことにより自信を得たという経験は、『キャプテン・マーベル』で活かされていると思いますか?「ここはカットしないといけないけど、この方がいい映画になるから」と確信を持って言えるようになりましたか?

デビー:ライアンと私は最悪のコンビでした。やりだすと止まらないから。2D DCP(Digital Cinema Package、デジタル シネマ パッケージ)という、劇場で上映される実際のファイルを確認する作業を行っていたのですが、音声メモを作ることになっていました。それで2人とも音声メモを1ページ分を作成したのですが、そこで「これならIMAXバージョンもできるよね、最終版を確認したんだから」と言われて、私たちは「あ、そうだね」と。ちょっとしたことなんですけど、よりよくなるよう、やり続けるんです。手元から引きはがされるまでね。

 

マット:『スパイダーマン…』と『ブラックパンサー』の後は、すっかりマーベル・ファミリーの一員となった感じで、『キャプテン・マーベル』に参加するのも自然なことだったのでしょうか、それともこの仕事を得るためになにか特別なことをしましたか?

デビー:そういう順番で進んだわけではないんです。当時私は『スパイダーマン…』に取りかかっていて、まさに夢を生きている、夢が叶ったという状態でした。最高の気分で仕事をしていました。とっても楽しんでいましたね。そんなとき、マーベル初となる女性がメインキャラを務める『キャプテン・マーベル』が製作されると知り、ものすごくワクワクしました。監督が発表されたとき、よし、『キャプテン・マーベル』に参加する方法を探さなきゃ、と思いました。でも、マーベルで仕事を始めてまだ日が浅かったので、別のプロジェクトに自分を売り込もうと誰かに話そうにも、安心して声をかけられそうな人がいませんでした。『スパイダーマン…』で自分の力量を示すのに精一杯でしたから。それで、キャプテン・マーベルのTシャツを買ったんです。そして、ケヴィン・ファイギやその他の幹部が出る編集部門のミーティングがあるたびに、そのTシャツを着て出席しました。つまり、ケヴィン・ファイギが来ると分かっていたときは必ずキャプテン・マーベルのTシャツを着て行ったのです。最後にはそれがクルー内でお決まりのジョークになりました。私がキャプテン・マーベルのTシャツを着ていると、スタッフが「ああ、今日はケヴィン・ファイギが来るの?」というようになったのです。こうすることで自分も、自分と『キャプテン・マーベル』との意識下のかかわりを生み出そうとしていたんです。

そんなある日、ミーティングで「『キャプテン・マーベル』の編集は誰がいいかな?」という話になり、誰かが「なぜだか分からないけど、『キャプテン・マーベル』のことを考えると、かならずデビーのことが頭に浮かぶんだ」と言いだし、他の誰かも「変だよね、私もそうなの」と。それで皆が「これは何かのお告げに違いない」と。ずっと同じTシャツを着ていたので、最後には…ぼろぼろになりました。

こうして『キャプテン・マーベル』に参加することになり、ディレクター陣に会うことになりました。撮影が終わった次の日、私たちはマーベルのオフィスへと移動しました。オフィスに全員集合し、ディレクターたちもやって来ることになっていたので、あのキャプテン・マーベルTシャツを着るのにぴったりの日だと思ったんです。「ファンクラブの会合」みたいな感じで。それで、あのTシャツを着ていたら、ディレクターの一人がそれに気づいてこう言いました。「このTシャツ、相当古いけど、ヴィンテージなの?」それで私は「いえ、そうじゃなくて、かなり着古しているだけです」と答えました。するとケヴィン・ファイギが「そうなんだ!彼女、『スパイダーマン…』の仕事中ずっとこのTシャツ着てたんだよ」と。

どうやら、私が思っていたほどこの作戦は巧妙だったわけではなかったようですが、とにかく功を奏しました。ダンとの話に戻りますが、私は彼らに「『キャプテン・マーベル』で働かせてください」と言ったことはありません。でも、私がそれを望んでいるということは、彼らに完璧に伝わっていました。はっきりとね。そして彼らが決定を下した。これがあるべき姿だと思います。

 

マット:本作は公開されたばかりです。仕事が完了したのは、実際の公開日のどれくらい前でしたか?最後の最後まで作業することもありますよね。

デビー:ええ、この作品は本当にぎりぎりまで行きました。最後の最後の編集は、もう本当にこれ以上は無理というところまで行きました。配給の仕組みは複雑で、国際配給ともなると私には事情が全く分かりませんが、とにかくもうこれ以上は変更不可能というところで納品しました。

マスター版をプリントして、最終版のサウンドを重ねて、出荷するというところでした。通しで観ているときに突然、ポストクレジットシーンについて、あるアイデアを思いついたんです。ネタバレしたくないので、「ネコが机に飛び乗る」とだけ言っておきましょう。そのシーンを観ているとき、ネコが飛び乗るまで何もない机の上を6秒間ほど映すともっと面白くなると気が付いたんです。エンドクレジット後のシーンです。

マーベル作品にポストクレジットシーンがあることは皆知っています。だから、ワクワク感を演出できるといいなと思ったのです。それに、間があると、その後の出来事はずっと面白くなります。ただ…この作品の作業は完了してしまっている。それで、私はこのアイデアを売り込んで「可能ですか?最後のショットなんです。分かってます、作業は終わった、分かってます。でもやり直すことはできる、そうですよね?」

どれだけ多くの部署と人から承認をもらう必要があったのか分かりませんが、とにかく承認をもらうのに数時間かかりました。サウンドステージから編集室まで走って、机の上を眺めるだけの6秒を追加しました。

もちろん、その2時間ほどの間、みんなから大ひんしゅくを買いましたよ。納品し直さなければならなかったので。でも、それで作品はより良いものになりました。とにかく、ぎりぎりまでやりました。作品をより良いものにするためには、いつもできる限りのことをするつもりです。観客のためにも、作品のためにも、それは当然のことです。

 

マット:『キャプテン・マーベル』では共同エディターとしてもクレジットされましたね。アクションシーン、ストーリー部分、または他の要素で、何か仕事の分担というのはありましたか?

デビー:『キャプテン・マーベル』では、女性エディターとしてアクションシーンをカットする私の実力を示すことができたのではないかと思っています。あの作品はマーベル初の女性が主人公となる映画だったので、ある意味方向性が少し異なっていました。それで私は、ストーリーの核心となる部分やユーモアに重点を置くことが重要だと感じました。だから『キャプテン・マーベル』ではアクションシーンをほとんどやらず、他の要素にフォーカスしました。

マット:でも、あるアクションシーンを手がけていらっしゃいますね。

デビー:ええ。(主人公の)キャロルがスクラルから逃げようとしているシーンです。

マット:映画の冒頭近くのシーンですね。このシーンの編集で印象に残っていることは?

デビー:このシーンの最大の課題は、手を加える前はかなり長かったということです。ストーリー上でもアクション上でも、多くの展開が含まれていました。作品全体の流れから、このシーンについて検討したみたとき――これはキャロルが地球のレンタルビデオショップ、ブロックバスターに墜落する直前のシーンなのですが――、ストーリーが本格的に展開していくのは舞台が地球に移ってからだと気づいたんです。なので、できるだけ早く地球に舞台を移し、ビッグアクションのシーンは地球に移動するまで残しておきたいと考えました。それより前のアクションシーンは、映画のストーリーの流れや勢いを邪魔してしまうからです。というわけで、ここでの仕事のほとんどはシーンを凝縮させることでした。凝縮させつつも、キャロルが超クールでタフな戦士であることがはっきり分かるようにしたんです。時間はあまりかけずに。

 

マット:こういったアクションのシークエンスの編集が難しい理由は、そのアクション的要素でしょうか、それともバーチャルエフェクトなどによるものでしょうか?

デビー:そうですね、それぞれに独自の難しさがあります。ビッグアクションのシークエンスにはたくさんの「動き」が含まれていますが、一番の課題は観る人の注意を引き寄せることだったりします。たとえばジョークのシーンでは、数フレームの差で、そのジョークが最高に面白くなったり、冴えないモノになったりしますよね。それぞれ課題が違うんです。アクションシーン、特にCGIを多用した映画でのアクションシーンには多くの手が加えられています。とはいえ、選択肢はたくさんありますし、アイデアは何でも実現可能です。そういう意味ではエキサイティングですね。

 

マット:先ほど、ペース展開についてのお話がありました。主人公が地球にたどり着いてから映画の本当のストーリーが始まるという。主人公はそこで本当の自分に気づくわけですね。こういったストーリーのアーク(物語の横糸)を扱うのは難しいものですか?編集する際、わずかな変更を加えることがその後のストーリー展開に波及していく可能性がありますが、こういったことはどのように取り扱っているのですか?そういうことについて認識しながら編集しているのでしょうか?

デビー:一般的に行われているのは、シーンカードと呼ばれるものを使用することです。シーンカードは、あるシーンを包括する1枚のスチル画像です。短い説明文が付けられていて、全シーンのカードを壁一面に張っています。それを見れば、すぐに作品全体の進行が分かるようになっています。楽しいんですよ。カードを見ながら「待てよ、このシーンをここに動かすと…これがその前のシーンになると。ここでこれが起こって、よし、ちゃんと辻褄は合ってるわ。でも、そうするとこれが次のシーン…あれ、これだとだめだ。それじゃあ、これはもう少し後ろにずらそう」みたいな感じで。作品の全体的な流れを視覚的に確認するのに便利です。

マット:ラッキーなことに、先ほど話した「脱出」シーンのプリビジュアライゼーションがここにあります。これについて説明していただけますか?

デビー:プリビジュアライゼーションは「プリビズ」と呼んだりもしますが、ビッグなアクションシーンを簡略に映像化したもので、非常に高額になるシーンを撮影する前に、何をどう撮影するのかの検討に使います。撮影のロードマップのようなものです。編集のロードマップにもなります。プリビズのシークエンスをカットするエディターがいる場合もしばしばです。

制作時期が迫る、あるいは制作が始まると、作品のメイン・エディターが引き継ぎます。コラボレーティブなポストプロセスです。もっと面白くなりそう、あるいは何かが足りないと思うカットがあれば、プリビズアーティストがそういったショットを作ります。先の話に出た、カット前のシークエンスがなぜ長めだったのかがここで分かると思います。ご覧のシークエンスには、最終版からはカットされたショットが多数含まれています。でも、プリビズと全く同じように撮影されたショットもあります。つまり、まったく別のシーンになるものも、そのままになるものもあるということです。プリビズは参考にはしますが、ある時点で使用しなくなります。プリビズにあって、実際に撮影もされた戦闘シーンであっても、後で必要ないと判断したシーンもあります。そんなわけで、スクラルはばっさりカットして、キャロルがまっすぐドアから出て行くようにしました。これも短縮のひとつの手法です。

 

マット:こういった作品の編集はセットで行うのですか、それともハリウッドのスタジオで?

デビー:メインの撮影中はロケに同行します。監督に連絡が付きやすいので。セットにも顔を出しますが、客観性を保てるようにセットにはあまり長居しないようにしています。それに、ほとんどのスタジオは撮影が完了したらそれで終わりです。大きな問題があったら、追加撮影をスケジュールしてその問題を解決するというスタイルです。

そしてマーベルは――本当に驚きなのですが――、ひと通り撮影してみるとその作品、ストーリー、キャラクターのことがより良く理解できるということで、最初から追加撮影をスケジュールに組み込んでいるんです。追加撮影があるということを事前に把握しているわけです。なので、追加撮影を行う際は(私が関わった3作品すべてで行われました)、セットに出向き、ラップトップにAvidをセットアップしておいて、ショットが撮影されたら誰かがそれを取りに行き、取り込んだものを編集しました。

シーンの多くはクロマキー撮影だったのですが、私は背景を使用して簡単な合成を行っていました。それで、監督が来るときまでに、それをシーンにインサートしておきました。追加撮影はたいてい台詞やユーモアを目立たせるためのものなので、すでに完成している部分にきっちり合わせないといけない。なので、この段階でセットに顔を出すのは楽しかったです。

マット:必要なシーンが撮れているかどうかという判断をしたり、それを伝えるという役割はエディターに任せられているのでしょうか?セットにはかなりのコストがかかっていますから、エディターのOKがなければセットを解体することができませんよね。

デビー:そうなんです。だから、さっきご覧いただいたようなビッグ・シークエンスを撮影する場合、ある時点で恐ろしい電話がかかってくるんですよ。「セットを畳んでいいか?」というね。セットにはそれこそ何千ドルもの費用がかかっていますから、必要なフッテージが撮れていることをしっかり確認しなければなりません。これもエディターの仕事です。これにはプリビズが役に立ちます。必要なショットを理解するための便利なロードマップになりますから。エディターは作品の番人的な存在です。撮影中、サウンド、スコア、ビジュアルエフェクト、こういったものすべてが編集というプロセスを通ります。だからエディターはこれらすべての番人となり、実現しうる最高の作品を届けなければならない。つまり…あらゆる部分に慎重に首を突っ込むことになる(笑) もっとちゃんとした例えを考えておきます。

 

マット:『スパイダーマン…』の編集中から『キャプテン・マーベル』に参加したいと考えていたあなたは、もちろん『ブラックパンサー』に参加する前から『キャプテン・マーベル』のストーリーを知っていたんですよね。マーベル作品に参加する場合、関係するのはその作品だけではありません。それらはマーベル・シネマティック・ユニバースの一部であり、他の作品にまたがるストーリーラインの一部でもあります。『キャプテン・マーベル』や『ブラックパンサー』を編集しているとき、脚本に書かれていること以外の他作品のストーリー要素について意識していましたか?『アベンジャーズ/エンドゲーム』との関連性だとか、過去のマーベル作品での出来事について注意しなければ、といったことを考えながら作業したのでしょうか?

デビー:他の作品で何が起こるのかについてはよく把握していません。だから、突然目の前でカジュアルに『アベンジャーズ』の話が始まったりするとうろたえるんです。ファンだから「何が起きるのか、こんな風に知らされたくない!重要なストーリー展開についてこんなに関心なさそうに話すこの人から聞かされるなんて!」となります。ネタバレについて、ケヴィン・ファイギに文字通り説教したこともあるくらい。だから本当に何が起こるのかについては知りません。

マーベル作品を見たことがなく、キャラクターについて何も知らない人が観る場合に、作品のそれぞれがストーリー的にもキャラクター的にも個々の作品として成立していることは、極めて重要だと私は思います。そして、そういった基礎がちゃんとしていれば、他の作品を引き合いに出したりして作品にイースターエッグ(隠しメッセージ)のテクスチャを加えるのは最高だと思います。私もみんなと同じで、あれ大好きですから。でも、それは作品のプラスにならないといけない。マイナスになってはいけません。マイナスになるとしたら、存在する場所はその作品にはないのです。

 

マット:今回のインタビューではたくさんのことを教えていただきましたが、その中にはこの業界で仕事をするための優れたアドバイスもありました。あなたがダンと仕事していたときのように、この業界に入りたいという人があなたに会いに来たら、どういったアドバイスをしますか?

デビー:参加したい作品のTシャツを買いなさい!(笑) 真面目な話をすると、あなたを支援してくれる人を探すことだと思います。それが私にとっては役に立ちました。メンター(指導者)を見つけることですね。仕事がもらえることを期待するのではなく、彼らの見識や、これまでの仕事の苦労話を聞くだけでも勉強になります。そして、友情とメンターシップを構築できたなら、彼らがあなたに扉を開いてくれるかもしれません。

それと、「ノー」を個人攻撃と捉えないこと。「ノー」と言われても、それはあなたのことを否定しているのではありません。「ノー」の洗礼に負けず、とにかく前進していくことです。これだと思う作品が見つかったら、そのためにがむしゃらになること。映画制作に熱意があり、あなたが希望する仕事で成功を収めているポジティブな人々に囲まれていれば、扉はそのうち開かれると思います。

マット:素晴らしいアドバイスだと思います。助言を受けていた立場から、良き指導者へと進化されたわけですね。本日はお越しいただき本当にありがとうございました。

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アーティストリレーションズのシニアディレクターとして、メディア・エンターテインメント業界で、最高の評価を得ているストーリーや音楽の作成でAvid製品をご活用くださっているクリエイティブなプロフェッショナルに関心を向けるだけでなく、彼らと次世代を担うプロフェッショナル志望者たちとをつないでいます。