Avid S6導入事例 #32:朝日放送テレビ株式会社

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朝日放送テレビ(大阪・福島)のMA室

関西の人たちの間では“ABC”の愛称で親しまれている在阪テレビ局、朝日放送テレビ(大阪・福島)。ANN系列の準キー局である同局は、長寿番組の『パネルクイズ アタック25』や正月恒例の『芸能人格付けチェック』など、高視聴率のオリジナル番組を数多く制作していることでも知られ、すべての曜日で全国放送される番組を抱えています。そんな朝日放送テレビは先頃、本社社屋内にあるMA室の大規模改修工事を実施。最新のテクノロジーを積極的に取り入れ、これからの10年を見据えた先進的なMA室へとリニューアルしました。朝日放送テレビ技術局制作技術部制作技術課長の和三晃章氏は、イマーシブ・オーディオとハイレゾ・コンテンツへの対応が今回の改修における大きなコンセプトだったと振り返ります。

 

「MA室をリニューアルするにあたり、最初から頭の中にあったのはイマーシブ・オーディオへの対応です。イマーシブ・オーディオと言ってもいろいろなフォーマットがあり、地上波放送でどれが採用されるか現時点では決まっていないわけですが、縦軸を含む音響は将来的に絶対に必要になるだろうと。その作業環境を後から整えるのは大変ですし、特にハイト・スピーカーはこういう機会でなければなかなか取り付けられません。ですのでイマーシブ・オーディオには絶対に対応させたいと考えていました。もう一つあったのは、ハイレゾへの対応です。弊社は昔からクラシックをハイレゾで収録していて、現時点ではそれが商品として世に出ているわけではないのですが、配信プラットフォームもどんどん増えていますし、いずれはそういう仕事が増えていくのではないかと。しかし以前の環境ではコンソールが48kHzまでしか対応していなかったので、ハイレゾで収録した音をモニターするには、Pro Toolsから直接スピーカーに送らないといけなかった。なのですぐにハイレゾの作業ができる環境にしたいと思ったんです。やはりクラシックですと、96kHzと48kHzでは音がまるで違いますからね」(和三氏)

ハイト・スピーカーを4本追加し、イマーシブ・オーディオに対応

長らく音響制作に従事してきた技術者として、イマーシブ・オーディオには大きな可能性を感じていると語る和三氏。実際に作業をしてみると、思いがけないようなコンテンツと相性が良かったり、いろいろな発見があるといいます。

 

「意外かもしれませんが、バラエティー番組なんかもイマーシブ・オーディオと相性が良かったりするんです。一昨年の『M-1グランプリ』(註:朝日放送テレビ制作の漫才コンテスト番組)で、客席にアンビソニックスのマイクを吊り、ネタやMCをマルチで収録してイマーシブ・ミックスをするという実験をやってみたんですが、会場の特等席で見ているような感じで凄くおもしろかった。後ろからどんどん押される感じで(笑)。あとはもちろん、スポーツや音楽のコンサートといったライブ・コンテンツですね。甲子園で行われる高校野球の試合を前々から素材として録ってあるんですが、イマーシブで再生すると臨場感が本当に凄いんです。一昨年の『Inter BEE』でも高校野球の素材を使ってデモしたんですが、多くの方から“これは凄い!”との感想をいただきました」(和三氏)

朝日放送テレビ 技術局制作技術部 制作技術課長、和三 晃章 氏

イマーシブ・オーディオ制作に対応するため、今回の改修では5.1chに追加する形で4本のハイト・スピーカーを設置。ITU規格の5.1chのレイアウトを維持しつつ、ミニマムなスピーカー数でイマーシブ・オーディオ対応を実現しているのがポイントです。

 

「イマーシブ・オーディオに対応すると言っても、今やっている 5.1chの仕事をそのまま継続しなければならないので、ITUの規格どおりに平面にスピーカーを5本配置し、その上でハイト・スピーカーを追加しました。リアのハイト・スピーカーはきっちり30°、フロントのハイト・スピーカーは29.5°の位置に取り付けてあります。そしてFluxのSPAT Revolutionを活用することで、様々なイマーシブ・オーディオ規格にバーチャルに対応させているんです。Pro Toolsの出力をSPAT Revolutionに送ることで、Dolby Atmos®だろうがAuro-3Dだろうが22.2chだろうが、あらゆる規格をバーチャルにシミュレーションすることができる。あくまでもシミュレーションですので、実際にスピーカーを並べたのとは違うとは思うんですが、それでもいろいろなフォーマットを仮想的に再現できるというのは大きいですよね」(和三氏)

新しいMA室の中心となるAvid S6

そして新しいMA室の中心となるのが、32フェーダー/5ノブのAvid S6です。和三氏はS6を選定した理由について、「コンソールを導入することで“足枷”を作りたくなかった」と語ります。

 

「今回リニューアルするにあたり、長らく使用してきたデジタル・コンソールの導入も検討したんです。しかしコンセプトの一つであるハイレゾへの対応ということを考えると、検討していたコンソールは96kHzまでしかサポートしておらず、せっかくPro Toolsが192kHzまで対応しているわけですから、そこに足枷を作りたくないなと。それだったらアナログ・コンソールはどうかとも思ったんですが、バスの数が少なくてイマーシブ・オーディオに対応できない。音質や機能、使い勝手などを総合的に判断して、最終的にS6を選定しました。これが一番シンプルな形だろうと」(和三氏)

S6は32フェーダー/5ノブという仕様

S6は、2マン・オペレーション時の作業性を考慮し、間にProducer Deskを挟んだ24フェーダー+8フェーダーのレイアウトを採用。Pro Toolsは、HDXシステムが2台用意され、メイン・システムはカード3枚、サブ・システムはカード1枚という構成になっています。

 

「これまでステレオや5.1chの作業ではDSPを使い切ってしまうことはまず無かったのですが、以前実験的にアンビソニックスのミックスをした際、DSPがすべて埋まってしまったことがあったんです。これからイマーシブ・オーディオの実験を積極的にやっていきたかったので、今回メイン・システムのカードを3枚に増強しました。オーディオ・インターフェースに関しては、Pro Tools | MTRXをメイン用、オグジュアリー用、予備用と3台導入しました。いずれもADカード、DAカード、MADIカード、Danteカード、SPQカードを搭載したフル・スペック仕様で、SPQカードのEQカーブもコピーしてあるので、完全に同仕様ですね」(和三氏)

新たに導入されたPro Tools | MTRX

改修工事後、直ちに業務で使用開始したという朝日放送テレビの新しいMA室。和三氏は、作業性/音質ともに大変満足していると語ります。

 

「S6に関しては、フェーダーの感触が滑らかで、想像以上に高級感があり、僕は凄く好きですね。各トラックの波形が表示されるディスプレイ・モジュールも見やすくて気に入っています。しかし何より嬉しいのが、正面を向いて作業できること(笑)。ディスプレイ・モジュールの波形でフェーダーを操作するきっかけも掴めますし、正面を向いての作業がこんなにもやりやすいのかと改めて感動しています(笑)。これまでよりも音に集中できるようになりました。新しいスタジオの大きなコンセプトであるイマーシブ・オーディオとハイレゾに関しては、まだまだ研究中で、これからじっくり取り組んでいきたいですね」(和三氏)

写真手前左から、朝日放送テレビ技術局制作技術部制作技術課長の和三晃章氏、アイネックス制作技術部制作技術課映像・音声担当課長の坂本宗之氏、後方左からシステム・プランニングを手がけたROCK ON PROの森本憲志氏と前田洋介氏

朝日放送テレビ株式会社

https://www.asahi.co.jp/

Avid S6

S6は、モジュール式設計であり、構成されたシステムを選択するか、または独自のシステムを構築することが可能です。