Avid S6導入事例 #37:ヒューマックスシネマ HAC SHIBUYA

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東京・新宿に本社を置く株式会社ヒューマックスシネマは、劇場の経営とポストプロダクション、映像関連の2つの事業を手がける企業です。劇場経営のシアター事業部は、池袋、渋谷、横須賀、成田の首都圏4ヶ所に計27のスクリーンを持ち、洋画/邦画を問わず話題作から個性的な作品までバラエティに富んだ作品を上映。ポストプロダクションのHAC事業部は、新宿・富久町のスタジオにMA室4部屋、編集室9部屋を擁し、音楽のライブ・パッケージやCM、企業VPなど、様々なコンテンツを手がけています。そんな株式会社ヒューマックスシネマは今年6月、東京・渋谷に新しい拠点となるスタジオ、『HAC SHIBUYA』を開設しました。同社のマネジャーである稲葉和秀氏とシステムマネジャーの市川有人氏は、新スタジオ開設の経緯とコンセプトについて次のように語ります。

 

「新しいスタジオについては、2年くらい前から計画が持ち上がりました。そしていろいろな物件を見ているうちに、新しいことに取り組んでいきたいという気持ちが強くなっていったのです。映像であれば8K、音であればDolby Atmos®といった新しいテクノロジーに積極的に取り組んでいきたい。“最先端のテクノロジーにチャレンジできるスタジオ”というのが、『HAC SHIBUYA』の大きなコンセプトになっています」(稲葉氏)

 

「私はもともと技術屋なのですが、やはり昨日よりも前に進んでいきたいという想いがあります。新しい技術にチャレンジし、そこでいろいろな知見を得ることで、自信をもって次の仕事に向き合うことができる。8K、Dolby Atmosと新しい技術はどんどん出てきますが、その先にあるエンターテインメントは何なんだろうと。それはもう映像コンテンツではなく、VRやARなのかもしれないですし。ポスプロの枠を超えて、誰も体験したことのないようなエンターテインメントを創造していきたい。時代に取り残されずに、常に最先端のグループにいたいのです。場所を渋谷に決めたのは、新しいことにチャレンジするには最適な街だと思ったからです。世界中から人が集まってきますし、そういう場に身を置くことで、きっと刺激もあるのではないかと。新しいコミュニティも続々とできていますしね」(市川氏)

ヒューマックスシネマ『HAC SHIBUYA』のMA室、“Audio Suite”

新築ビルの1フロアに開設された『HAC SHIBUYA』は、MA室である“Audio Suite”が1部屋、編集室である“8K Suite”が2部屋という構成。VFX/プリプロ・ルームやミーティング・ルームもあり、“8K Suite”ではMedia Composerも活用されています。

 

「新しいスタジオを開設するにあたって、編集室とMA室を空間的にも設備的にも統一したいという想いがありました。具体的には、編集室のシステムをお願いした業者さんにMA室の映像も手がけていただいて、逆にMA室のシステムをお願いした業者さんに編集室のスピーカー周りも手がけていただきたいなと。映像と音のクオリティがどの部屋でも同じならば、クライアントも安心して作品のチェックができると思ったのです。既存のスタジオの改装ですと、編集室とMA室のレベルを揃えるというのは難しいと思うのですが、今回は新設ですので、これはぜひ実現したいことの一つでした。ですので編集室にも5.1chのモニター・システムを導入しています」(市川氏)

9.2.4chのモニター・システムを常設、Dolby Atmos Homeに対応した“Audio Suite”

ビルの上階とは思えない広さの“Audio Suite”は、PMCのモニター・スピーカーが9.2.4chの構成で設置され、Dolby Atmos Home/イマーシブ・ミックスに対応。作業の中心となるのは合計40フェーダーのAvid S6で、株式会社ヒューマックスシネマ HAC事業部チーフミキサーの嶋田美穂氏は、「大型コンソールを導入するというのも、今回実現したかったことの一つでした」と語ります。

 

「新宿のスタジオではArtist Mixを使用しているのですが、新しいスタジオはDolby Atmos Home対応ということで、これまでよりも扱うチャンネル数は増えますし、操作性を考えて大きな卓を入れたいというのはありました。Pro Toolsとの連携やDolby Atmosパンナーのことを考えると、S6一択という感じでしたね。S6は合計40フェーダーという仕様ですが、メインの作業デスクに24フェーダー、後方デスクには8フェーダーのモジュールが2台というセパレート・レイアウトになっています。ドラマの仕事ですと、効果や音楽の方もいらっしゃいますので、後方デスクに16フェーダーを振り分けました。モジュールは移動できるようにしてありますので、使用しないときはディレクター席として使えるようにしてあります。S6を収納してあるデスクは、日本音響エンジニアリングさんに特注で製作していただきました」(嶋田氏)

作業の中心となるAvid S6。モジュールをメインの作業デスクと後方のデスクで分割し、
メインの作業デスクには24フェーダー分のモジュールを設置

後方のデスク。8フェーダーのモジュールが2台、効果/音楽用に設置してある

Pro Toolsは、メイン機、効果用のSE機、音楽/エクストラ機、計3台のHDXシステムが導入されており、HDXカードはメイン機が3枚、SE機と音楽/エクストラ機は各2枚という構成。オーディオ・インターフェースは、2台のPro Tools | MTRXをメイン機とSE機で共有し、1台はインプット用、もう1台はアウトプット用として使用されています。音楽/エクストラ機のオーディオ・インターフェースはPro Tools | MTRX Studioで、メインのPro Tools | MTRXとはDanteで接続。3台のPro Toolsの共有ストレージとして、容量40TBのAvid NEXISも導入されています。

 

また、ワークのビデオに関しては、Media Composerをインストールした専用のVideo Satelliteマシンを用意することにしました。最近はPro Toolsと同じMacでワーク・ビデオを再生するシステムも増えていますが、途中で映像の差し替えが発生すると、そこで作業を中断しなければなりません。ワーク・ビデオ専用マシンを用意することで、Pro Toolsを止めずに作業を続けることができるシステムにしたかったのです」(嶋田氏)

メインのオーディオ・インターフェースである2台のPro Tools | MTRX

3台のPro Toolsの共有ストレージとして40TBのAvid NEXISも運用

6月のオープン後、既に多くのコンテンツ制作で使用されたという『HAC SHIBUYA』の“Audio Suite”。嶋田氏はその仕上がりにとても満足していると語ります。

 

「今回のMA室は、ムダなことをできるだけ排除して、クリエイティブなことに集中したいというのがコンセプトの一つでもあったので、皆さまのおかげでそれができる環境が整いました。S6に関してはまだ使えていない機能がたくさんあるのですが、フェーダーの操作感がArtist Mixとは全然違いますね。最初はノブはあまり触らないかもと思っていたのですが、実際に操作してみると、もっとあってもよかったかなと思っています(笑)。これだけのスタジオができたので、今後いろいろなコンテンツにチャレンジしていきたいですね。Dolby Atmosだけでなく360 Reality Audioにも興味がありますし、新宿のスタジオではVRのコンテンツを何本か手がけて、イマーシブ・オーディオの可能性を感じています。多くのコンテンツを作り、新しい形のエンターテインメントが育っていけば、作る側の私たちもどんどん楽しくなっていきますし、世界中に楽しさと喜びを提供できたら本望です」(嶋田氏)

(写真手前右から) 株式会社ヒューマックスシネマ マネジャーの稲葉和秀氏、同 システムマネジャーの市川有人氏、HAC事業部 チーフミキサーの嶋田美穂氏、同 アシスタントミキサーの村井知樹氏
(写真後方右から) オンズ株式会社の井上聡氏、タックシステム株式会社の藤田一哉氏

Dolby Atmosは、Dolby Laboratoriesの登録商標です。

Avid S6

S6は、モジュール式設計であり、構成されたシステムを選択するか、または独自のシステムを構築することが可能です。