Avid VENUE | S6L + Pro Tools | MTRX 導入事例 #07:BLACKBOX³

By in Pro Mixing, ライブサウンド

2021年4月にオープンしたBLACKBOX³(東京・新宿)は、国内屈指の設備を誇るライブ配信スタジオです。運営するのはファン・コミュニティー・アプリ『Fanicon』で知られるTHECOO(東京・渋谷)で、4面LEDパネルを常設した“BOX STUDIO”と、幅広い用途に対応する“BRICK STUDIO”という2つのスタジオを併設。『Fanicon』やTHECOOのチケット制ライブ配信サービスを利用しているアーティスト/クリエイターは、すべての設備を無償で利用することができます。THECOOの代表取締役CEOである平良真人氏は、本格的なライブ配信スタジオを開設した理由について、「せっかく始まっている“おもしろいこと”に火を灯したかった」と語ります。

「コロナの問題が起きた昨年(注:2020年)、弊社では『#ライブを止めるな!プロジェクト』というキャンペーンを行うなど、様々な形でアーティストのライブ配信を支援しました。ライブ配信を本格的に始めて、これによって新しい音楽の表現が生まれるのではないかと凄く可能性を感じたのですが、同時にいろいろな課題もあるなと思ったんです。ライブ配信を行う上で一番ネックになるのが場所で、ライブ・ハウスでは演出は比較的自由にできるものの、音質にこだわることができない。一方、レコーディング・スタジオは音にはこだわれるけれども、自由に演出するのは難しかったりする。だったら、ライブ・ハウスでもレコーディング・スタジオでもない、その2つの中間のようなライブ配信に特化した場所を作ったらどうかなと。それを具現化したのが、このBLACKBOX³なんです」(平良氏)

東京・新宿にオープンしたライブ配信スタジオ、BLACKBOX³。写真はメイン・スタジオとなる“BOX STUDIO”のブース

メイン・スタジオとなる“BOX STUDIO”には最新鋭の映像/音響機器が常設されており、高さ4メートル/横幅9メートルのLEDパネルが壁面に取り付けられた広大なブースは、4K/60p対応のリモート・カメラが5台完備。リモート・カメラはパン/チル情報をFreeDプロトコルで出力する最新のもので、現実空間の動きを仮想の3D空間でトレースできるだけでなく、Unityなどのゲーム・エンジンを接続すれば、現実空間とLEDパネルの境目を無くしたXR的な演出も可能になっています。また、LEDパネルのコンテンツを出力するメディア・サーバーとして、高スペックなdisguise vx2も常設。単にコンテンツを送出するだけでなく、UnityやTouch Designerなどを使用した複雑なエフェクト処理も行えるようになっています。

 

「“BOX STUDIO”のコンセプトはシンプルで、“LEDパネルが常設された最先端の技術が使えるスタジオ”というものでした。ただ、最先端の技術と言っても、現時点ですべての人がそれを活用できるわけではありませんし、将来にわたって拡張できるようになっているのがポイントです。映像周りの機器だけでなく、照明機器も充実していて、常設していないのはレーザーくらい。ライブ配信/ビデオ撮影スタジオとして、十分過ぎる設備になっていると思います」(平良氏)

 

“BOX STUDIO”のブースには、高精細なLEDパネルが4面に取り付けられている

そして“BOX STUDIO”の配信用コンソールとして導入されたのが、Avid VENUE | S6Lです。コントロール・ルームに設置されたVENUE | S6Lは、サーフェースが24フェーダーのS6L-24C、DSPエンジンはE6L-112、ステージ・ボックスはStage 64とStage 16という構成で、Stage 64はブース側、E6L-112とStage 16はコントロール・ルーム内に設置。BLACKBOX³の音響システムをプランニングしたLSDエンジニアリングの遠藤幸仁氏は、音質の良さと拡張性の高さを評価してVENUE | S6Lを選定したと語ります。

 

「実際のライブ配信では、PAのオペレーターさんが配信を担当するケースと、レコーディング・エンジニアさんが配信を担当するケースがあるんです。なので、どちらのエンジニアさんでも扱えて、96kHzに対応した高いクオリティのものということでVENUE | S6Lを選定しました。VENUE | S6Lであれば、Pro Tools用のプラグインも使うことができ、拡張性が高いところも、このハコにはマッチしているのではないかなと。それと今回のシステムは、VENUE | S6Lの出力がデジタルのまま配信機器に入っているというのも特徴です。VENUE | S6Lの出力段でDA、配信機器の入力段でADしてしまうと、音質が劣化するだけでなく、ラウドネスのマージンなども崩れてしまいますから。ですので配信機器は、VENUE | S6Lのクロックにぶら下がっている形になります」(遠藤氏)

“BOX STUDIO”のコントロール・ルーム

音関係の機材は前方のデスクに集約されている(左側は照明卓)

配信用コンソールとして導入されたVENUE | S6L。サーフェースは24フェーダーのS6L-24C

デスク下のラックに収納されたDSPエンジン、E6L-112

またコントロール・ルームには、Pro Tools | HDXシステムも常設されており、高品位なマルチトラック・レコーディングにも対応する構成になっています。Pro Tools | HDXシステムのオーディオ・インターフェースはPro Tools | MTRXで、配信用コンソールのVENUE | S6Lとはデジタルで接続。コントロール・ルームにはATCのモニター・スピーカーやGrace Designのモニター・コントローラーなども設置され、レコーディング・スタジオのようなセットアップになっているのも目を惹きます。

 

「こういったハコ常設のPro Toolsは、ネイティブのシステムが一般的ですから、Pro Tools | HDXとPro Tools | MTRXの組み合わせというのは超ハイ・スペックなのではないかと思います。VENUE | S6LとPro ToolsはAVBで接続するのが一番シンプルなのですが、それだと64chで頭打ちなので、拡張性を持たせるためにあえてMADIで接続しているのもポイントです。Pro Tools | MTRXは、16chのアナログ入出力カードも装着してあるので、レコーディング用の持ち込み機材にも対応できます」(遠藤氏)

レコーディング用システムとして、Pro Tools | HDXとPro Tools | MTRXも常設

ライブ・ハウスの演出の自由度と、レコーディング・スタジオの高音質を両立させた、これまでに無かった新しいタイプの施設、BLACKBOX³。平良氏は今後の運用について、「現時点では箱貸しをする予定はないが、我々にビジネス上のメリットがあれば柔軟に対応していきたい」と語ります。

 

「コロナの問題が終息すれば、お客さんは再びライブ会場に戻って、配信の役割は終わると言う人もいますが、ぼくはそれが凄く嫌だったんです。インターネットを利用した新しい音楽の楽しみ方が絶対にあると確信していて、それはまだ誰も見つけていないのではないかなと。ライブ会場に行けないから配信ではなく、積極的にライブ配信を選ぶようになってほしい。インターネットには、即時性や双方向性だったり様々な特徴があるので、新しい音楽の楽しみ方をアーティストの皆さんと一緒に見つけていけたらいいなと思っています。ですので、ビジネス上のメリットが無くても、何か新しい映像作品や音楽作品の企画があって、おもしろそうなものであればぜひ一緒にできれば。アンディ・ウォーホルのThe Factoryのように、新しいものを生み出したいクリエイターがここに集まってくれると嬉しいですね」(平良氏)

運営会社THECOOの代表取締役CEO、平良真人氏

VENUE | S6L

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