ブロードキャスト制作のオンプレミス・ワークフローとクラウド・ワークフローをつなぐ

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クラウドベース放送への道のりがマラソンだとしたら、コロナ禍は、ランナーがまだウォーミングアップ中に鳴らされたスタート合図のピストル音でした。在宅勤務を強いられた放送局は、リモート・ワークフローを一晩で立ち上げなくてはなりませんでした。いち早くクラウド技術を導入していた放送局が先んじる一方で、多くの報道制作室は、スタートラインに無理やり立たされました。

 

多くの放送局では、オンプレミス、リモート・アクセス、およびクラウド・ワークフローを組み合わせてきました。最も多く行われているのは、オンプレミスのインフラストラクチャへのリモート・アクセスの強化です。クラウドベースの制作へ完全移行する準備ができていなかった組織でも、コロナ禍が、場所を問わないコンテンツへのアクセスやコラボレーション・ワークフロー、変化するニーズに応じて迅速に対応する能力、事業継続性を確保する強固なデータの障害復旧機能など、クラウドによる数々のメリットに業界の目を向けさせました。しかし現状では、放送制作の多くがスタジオ・インフラストラクチャを引き続き必要としており、ほとんどの組織は、オンプレミスへの既存投資を手放すことに消極的です。

 

当座の技術的ハードルと分散したチームのリモート・アクセスを可能にするビジョンにより、放送局は、クラウドという技術的構造をより深く理解した上で、より慎重にクラウドへの移行を計画できるようになりました。

 

単なるリフト&シフトではない

デジタル・プロダクション・パートナーシップ(DPP)の最近のレポートにあるように、クラウドは、場所というよりも哲学のようなものです。クラウドへの移行、あるいはハイブリッドモデルへの移行は、オンプレミスのシステム全体をオンラインに複製するものではありません。これには、既存ワークフローの再考と再設計が必要です。

 

「今のオンプレミス・インフラストラクチャをリフト&シフトすれば、クラウドでも使えるようになります」とAvidのストラテジック・ソリューション部門ディレクターのポール・トンプソン(Paul Thompson)は話します。「それは、最大限に機能するでしょうか?恐らく無理でしょう。オンプレミスで運用するより安上がりでしょうか?間違いなく否です。」

 

クラウドへの移行は、放送制作のやり方を大きく変えます。クラウド・ワークフローの構築と運用はもちろんですが、異なる財務モデルを統合することや、継続的な変化に対応できる機敏な人材の育成することも重要です。クラウドへの道のりには、全社的戦略の策定、テストと試行、最初の本格的ワークフローへの移行、反復および改善によるさらなる構築など、幾つかの重要なステップがあります。

 

クラウド導入戦略を策定する

成功するクラウド戦略の策定には、放送エンジニアやITだけでなく、組織全体からのインプットが欠かせません。

 

例えば、組織がクラウドベースの環境とオンプレミスのインフラストラクチャを使用して、映像の取得、ストレージ、処理や送出を行う場合、使用するクラウド・サービスやストレージの予算を確保しなければなりません。これは、時間が経つにつれ、需要に応じて変化する可能性があります。継続的な運用費が機器への先行資本投資に取って代わり、財務部門には大きな変化となります。財務部門は運営部門と密接に連携してそのような支出を把握し、サードパーティのソフトウェア・ベンダーと協力して、使用状況データやコストを管理・追跡するデジタル・ダッシュボードを開発する必要があります。

 

ワークフローの再設計には、オペレーション・チームや編集スタッフの意見も欠かせません。まず、何を改善する必要があるかを判断し、クラウドが有効な場所を特定します。例えば、コロナ禍では多くのチームが、できたばかりのコンテンツを格納して素早くアクセスしたり、分散したチーム間でコラボレーションしたりするには、クラウドがファイルベースのワークフローにとって理想的な場所であると気付きました。

 

クラウド戦略は、事業の各部門のニーズや目標に応じたものでなくてはなりません。完全クラウド・アプローチは、正しい方向を示すものになりえますが、段階的アプローチを信頼してください。

 

クラウドへの移行は、1つのワークフローから

クラウドを使い始める最善の方法は、試行することです。1回の大規模な移行を計画するのではなく、小さく始めて一歩一歩進めていきましょう。

 

トンプソンは、クラウドへの移行方法に、コスト効率と柔軟性を最大化する“ビルディング・ブロック”方式を推奨しています。クライアントと協力して、現状ではオンプレミスに残したほうが良いもの、最初にクラウドへ移行すべきもの、ハイブリッド方式に最適なワークフローを見極めます。

 

ローカルの取得や送出ニーズに合ったワークフロー、クラウドに障害が発生した場合のローカルでの編集は、当面はオンプレミスに残すのがベストです。クラウド導入の初期段階では、ディザスタ・リカバリ(災害復旧)やデジタル・アーカイブなどの自己完結型の使用例が、クラウドの機能チェックに適した選択肢として考えられます。

 

一方で、ニュース速報のライブ映像は、非常に複雑です。例えば、あるフィードはIPTVストリームを介してクラウドから発信され、別のフィードは衛星のような従来のインフラストラクチャから発信されます。それぞれ、エンコードや配信に必要な技術が異なります。ストリーミングはクラウドに直接取込まれて、衛星はオンプレミスで取込まれ、システム間で何らかの同期を行うこのワークフローは、短期的にハイブリッドなアプローチに適しているかもしれません。

 

クラウド移行には、可能な限りエンド・ツー・エンドのワークフローを採用してください。コンテンツをクラウドに出し入れするには、時間とコストがかかります。機能ブロックの面から考えると、例えば、放送局では、ビデオの取込み、編集、処理にクラウドを使用し、送出用ファイルをオンプレミスのリニア・インフラストラクチャへ配信することができます。

 

最も重要なことは、クラウドへの移行は継続的かつ進化を続ける道のりであり、本当の意味での“完了”はないと認識することです。小さく始めることで、組織は素早く方向を転換し、繰り返しの中で学ぶ教訓を実践して、コストのかかる失敗を避けることができます。

 

現在の状況にかかわらず、クラウド・ワークフローへの移行マラソンは進行中です。視聴者や広告主を維持するためのレースの中では、スマートなクラウド技術の計画的な導入が、ワークフローの効率性、拡張性、回復力を生み出し、放送局が取り残されてしまうことを防ぎます。

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