Dolby Atmosを使ったブレイム・ゲームEXP feat.ハリー・ショッタ

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ハリー・ショッタをフィーチャーしたブレイム・ゲームEXPは、4つのトラックと5つのパートからなるオーディオ・シネマティック・シーンで構成される18分の音楽体験です。この作品は、犯罪、貧困、剥奪、メンタルヘルスなどの社会経済的問題を探求しています。物語は、歌詞と物語の移り変わりに反映されたさまざまな視点から語られ、それは描かれた関係の複雑さと変遷過程をリスナーがよりよく理解するのに役立ちます。

 

このコラボレーションの目的は、従来の音楽制作と作曲を、通常は映画やゲームで使われるDolby Atmos®などの新世代の没入型オーディオ技術、および物語のサウンド・デザインとまとめることでした。

物語の構成要素に空間サウンド・デザインを使用し、音楽ミキシングに最先端のDolby Atmosオーディオ形式を使用することで、リスナーは物語の展開に没頭することができます。ブレイム・ゲームEXPは、オンデマンドの音楽配信での没入型ストーリーテリングの真の可能性を示しています。

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私たちはリスナーを音楽だけでなく、物理的な環境にも巻き込みたかったのです。このプロジェクトでは、アンビソニックおよびウェアラブル・バイノーラル・マイクを使用した録音を含む多くの実験的手法を利用しているため、従来のステレオ音楽制作には通常含まれていないリスニング体験に、新しいサウンドを作り出すことができます。

-オリバー・ケイデル2021
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このプロジェクトでは、いろいろな録音とミキシングのテクニックを試すことができ、とても楽しかったです。いくつかのシーンは、Ambeo一次アンビソニック・マイクを使用しました。すべての方向の位置情報を記録することにより、360°カメラのようにシーンを録音しました。これは5.1にデコードされ、Pro Tools内の7.1.2チャンネルベッドに統合されました。他のシーンでは、ウェアラブルSonic Presence SP-15Cマイクで録音されたネイティブ・バイノーラル録音が特徴的です。プリ・バイノーラルされたオーディオをAtmosミックスへの入力ソースとして使用すると、没入型サウンドのように聴こえるかもしれませんが、実際には逆説的です。ただし、ルールは破るためにあるため、いろいろな方法を試してみることを強くお勧めします。個人的には、このテクニックは主観視点のPOVからシーンを描写するのに効果的であることがわかりました。実際にとられたネイティブ・バイノーラル録音でオブジェクトをミキシングするだけでは、物理的に再現するのが難しいためです。ヘッドフォン・ミックスでも十分な作業はできましたが、バイノーラル要素がスピーカーにうまく変換されず、最終的には、創造的な観点から両方の配信方法を満たす最適なバランスを見つけることができました。 最後に、いくつかのシーンはベッドやオブジェクトを利用したサウンド・デザインと空間化によって完全に創り出され、実現されました。これらの構成を1つのピースにしていく過程は楽しかったです。当たり前ですが、正しい方法も間違った方法もありません。さまざまなアイデアにはそれぞれのアプローチが必要です。

私たちの技術的アプローチは、7.1.2 Dolby Atmosレイアウトの空間オーディオ解像度全体でチャンネルベッドとオブジェクトとの空間ミックスを作成することでした。この構成は、バイノーラル処理のおかげで、スピーカーとヘッドホンで真の3Dオーディオを創り出すことができます。ステレオや5.1などの従来の構成と比較して、Dolby Atmosの7.1.2チャンネル・レイアウトでは、オブジェクト・ベースのオーディオと組み合わせて、頭部伝達関数(HRTF)のセットでフィルタリングすると、ヘッドホンでも再生できる高さの次元が可能になります。HRTFは、耳と頭のサイズと形状を含む、人体の分析によってエンコードされた空間的な手がかりをキャプチャするフィルタの(左耳と右耳が別々の)ペアです。これらのフィルタをリアルタイムで使用して、没入型音楽ミックスなどのオーディオ信号に空間的な手がかりを埋め込むことで、従来のステレオ・ヘッドフォン再生では不可能なレベルの没入感を体験できます。

Dolby Atmos レンダラーでは、HRTF距離(「ニア(near)」、「ミッド(mid)」、「ファー(far)」)の選択ができ、プロデューサーとミキシング・エンジニアがミックス内の個々のサウンド要素に適用される空間効果の量を制御できます。ブレイム・ゲームでは、音楽トラックをつなぐ物語的な構成に空間処理が強調され、音楽自体には、ヒップホップに期待される忠実度が高くパンチの効いた音色を維持するために空間処理が控えめに使用されました。人間の脳は信じられないほど適応力があり、すぐに空間的な手がかりに慣れることができます。空間効果が個々の、またはサウンド要素のグループに適用される量とタイミングを制御することで、控えめな「センター・ステージ」ミキシングと完全な3次元空間を占める没入型オブジェクト配置を組み合わせることができる非常に強力なツールのセットが利用できます。これは、従来の非空間的アプローチでは不可能です。その結果、リスナーを喜ばせ、興奮させる、まったく斬新で創造的な方法のセットを作ることができました。ミックスのアレンジと制作中にされる創造的な決断が、音楽セクション間のコントラストとダイナミズムを創り出すことができるのと同じように、空間処理はプロデューサーとミキシングエンジニアにとって、没入型聴覚体験に新しい次元をもたらすことができます。

Dolby Atmosは現在、 Apple Musicプラットフォームの他に、いくつかの主要な音楽配信プラットフォームでサポートされています。業界内で没入型オーディオが進化し、適応されていくにつれて、近い将来、より多くの世界中のリスナーがこのコンテンツにアクセスするようになると信じています。さらに、多くの消費者向けデバイスにヘッド・トラッキング機能が導入されたことに非常に興奮しています。この技術は通常、Bluetoothを介してワイヤレスで動作するイヤホンまたはヘッドホンに組み込まれています。ヘッド・トラッキングは、コンテンツのセンター・ステージに対して3方向の自由度(3DOF)の動きを与えるため、ほとんどの通常のリスナーが聴き慣れていないリスニング体験にまったく新しい動きのある次元が追加されます。

今後10年間、空間的でインタラクティブなオーディオは、没入型コミュニケーション、ストーリーテリング、ブランド広告、音楽配信、ポッドキャスティングにおいて、重要な差別化要因であり、不可欠な側面になると信じています。現代音楽やその他の独創的な人たちが作るオーディオ・コンテンツにとって、本当に楽しみな将来です。

この作品の配信に関しては、AvidPlayプラットフォームが役に立ちました。現在の限られたオプションで、Dolby Atmosで空間オーディオをサポートするすべてのプラットフォームでコンテンツにアクセスできるようにすることで、多くの人に聴いてもらいたいと考えました。AvidPlayは、すべての主要なメタデータと配信機能をカバーするワンストップ・ショップであり、現在、Apple MusicTIDALAmazon Music HD、およびステレオ再生のみをサポートするその他の配信プラットフォームをサポートしています。 このプロジェクトは2021年9月8日にリリースされました。

 

アーティスト: ハリー・ショッタ
プロデューサー: マッキー・ジー & エルブ・N・ダブ
アーティスト・マネジャー: デイビッド・ロス
クリエイティブ・ディレクター: オリバー・ケイデル
ミキシング・エンジニア: オリバー・ケイデル
レーベル: 1.618 Music
このプロジェクトをサポートしてくれたオリバー・シュレッガー、マチュー・ヌトラ、ディラン・マーカス、エマ・リーズに感謝します。

Harry Shotta  ハリー・ショッタ
https://harryshotta.com/

ハリー・ショッタは、ドラム・アンド・ベースのシーンで人気を博して以来、世界中を旅してきた受賞歴のある国際的なMCです。彼は2017年に「アニマル」で2倍速のラップを披露し、エミネムの「ラップ・ゴッド」が持つ「モースト・ワーズ・オン・ア・ソング」のタイトルを破って、ギネス世界記録保持者となりました。ハリーはまた、2018年にニューヨークで開催されたフューチャー・オブ・ストーリーテリング・フェスティバルで始まった初めてのラップAR体験であるコンシクエンス(Consequences)を作成しました。その後、Boseが主催した2019年のレインダンス・イマーシブ・フェスティバルでも披露されました。ストーリーテリングをミュージカル・サウンドスケープに織り込むことへの情熱を常に持っており、考えさせられるような叙情的な物語を描いたハリーの最新作では、4つの異なるトラックで問題を抱えた少年の物語を表現しています。


Author: Oliver Kadel 著者:オリバー・ケイデル

オリバー・ケイデルは、ロンドンを拠点とする受賞歴のあるオーディオ・エンジニア兼サウンド・デザイナーであり、新世代の没入型メディア向けの空間およびインタラクティブ・オーディオを専門としています。2014年に1.618 Digitalを設立して以来、オリバーと彼のチームは、100を超える没入型プロジェクトのオーディオに取り組んできました。業界の慣習に加えて、オリバーはウェスト・ロンドン大学で講義を行い、修士課程で没入型オーディオを教えています。最近では、オリバーはヨーク大学オーディオ・ラボで博士号を取得し、バーチャル・リアリティの学習とトレーニングに関して空間音響心理学の影響を研究しました。2018年の初めに、オリバーは没入型オーディオ・ポッドキャストを立ち上げ、業界の専門家と影響力のあるゲストを招待し、没入型オーディオとXR業界のすべての分野について話し合いました。ポッドキャストは、業界の専門家、学者、学生にとって貴重な情報源として高く評価されており、業界のさまざまな部門を代表し、世界中でリスナーを増やし続けています。

Dolby Atmosは、Dolby Laboratoriesの登録商標です。
© 2021 Avid Technology, Inc. All rights reserved. Avid、Avidのロゴ、Avid Everywhere、iNEWS、Interplay、ISIS、AirSpeed、MediaCentral、Media Composer、Avid NEXIS、Pro Tools、Sibeliusは、米国とその他の国またはそのいずれかにおけるAvid Technology, Inc.またはその子会社の商標または登録商標です。「Interplay」の名称は、Interplay Entertainment Corp.の許可に基づいて使用しています。Interplay Entertainment Corp.は、Avid製品に関していかなる責務も負いません。その他の商標はすべて、各社が所有権を有します。製品の機能、仕様、システム要件および販売形態は予告なく変更されることがあります。

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