Pro Tools、Netflixシリーズ 『地獄が呼んでいる』 でOTTサウンドの未来を提示する(後編)

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出典:AVMIX 2022年2月号
文: イ・ムジェ記者

 

INTERVIEW

Bluecap Soundworks Post Studio

ホン・ユンソン 室長
サウンドデザイン、ミキシングおよびマスタリング担当

読者に向けて自己紹介をお願いします。

「私はサウンドデザインとミキシングおよびマスタリングを担当しております。音楽のシーンで最初の経歴をスタートさせましたが、後に映画分野へ業種を変更し、今まで活動しています。最初に携わっていたのはレコーディング分野でしたが、ADR録音やサウンドエフェクト制作のためのソース録音をしました。最初にサウンドエフェクト・ディレクティングをしたのは、イ・ジョンジェ主演の 『ユリョン』 からで、それ以来、キャリアを積んできました。」

 

当然、映画は環境が違うと思いますが、放送とOTTは音楽レベルにおいて、相当な制約がありますか?

「韓国の放送環境は-24LKFSで強力に管理されており、徹底的に関連コンテンツに合わせてマスタリングしています。Netflixの規定はユニークで、ダイアログ、つまりセリフの部分のみ-27LUFSで合わせています。それ以外の部分については、トゥルーピークの遵守以外特に触れていないのですが、セリフがよく聞こえるよう合わせようとすると、結局自然と全体の音量が合うようになるのです。おそらくこの部分については芸術的表現とみて、特には定めていないと思われますが、非常に合理的だと思います。」

 

D イマーシブ・サウンドはいつから作業されたのですか?

「映画 『暗殺』 は5.1chで完成されていましたが、これをDolby Atmos®でリミキシングしたのを思い出しました。2017年には 『JSA』 のリマスタリングにDolby Atmosを適用しましたし、2018年になってやっときちんとしたDolby Atmosコンテンツを制作し始めたと思います。当時はまだ大衆化されてない状況でした。専用上映館もほとんどなかったですね。国内大手企業が新しいフォーマットの家電製品を披露するためのデモを作り、AESやCES等で発表するためのコンテンツを主に作りました。」

 

Dolby Atmos作業において、難しさはありましたか?

「初期の頃はProduction Suiteとローカルレンダリングを使用して作業をしましたが、Pro Tools HDXカードを3枚すべて使っても足りないくらい重かったですし、作業的にも不便な面がありました。それで、当時Dolby RMUを導入したのです。しかし、今はPro Tools上のプラグインが数多く対応し、ハイブリッドエンジンを通じて強力なCPUリソースを使用できるようになったので、とても簡単に作業できており、ツール自体には全く不満はありません。難しさといえば、ワークフローですね。まだ過渡期であるため生じる問題だと思いますが、例えば、最初からDolby Atmosで企画し作業すると全く問題ないですね。その形で作業しておいてから、5.1chとかステレオ規格でダウンミキシングするのは本当に早くて楽です。
でも、ステレオまたは5.1chにてある程度作業を進めておいたものをDolby Atmosで拡張するとなると、本当に時間がかかります。現在は編集段階で、ある程度ワークフローを統一させるため7.1chベースで作業を開始しています。」

立体的な音を表現するためには想像力を発揮する必要がありそうですね。

「画面が与える情報がある場合は、視聴者は容易に受け取れるのですが、実際に画面にはないものの音も流れ、またそれが雰囲気を作り上げるのです。Dolby Atmosは “画面の限界” を超えるという点で本当にいいツールだと思います。単純に “スピーカーが多いからサラウンドポイントが多い” という概念とは異なります。単純にレイヤーが一つ増えただけではなく、空間全体に上段スピーカーを利用してサウンドデザインをしなければなりません。残響も創意的に使用する必要がありますね。」

 

空気感を極大化させるための、ご自身の秘訣をお持ちですか?

「私たちは音を聴く時、左右の動きはすぐに認識することができるのですが、前後あるいは上下の動きを認識するのは容易ではありません。それらを効果的に具現化するためにはすべての音が直線的にパンニングされるのではなく、ジグザグあるいは斜線にObjectが動くようにパンニングします。そうすることによって音の動きをよりリアルに感じることができます。最近は7.1.4または9.1.6に対応するリバーブ・プラグインが出ているので、前、後、上、下等それぞれの空気感を出せますね。前からはドライな感じで近づき、後ろは長い残響にてまとめられる空気感を演出できるのです。それがなければ、ステレオ・リバーブを方向別に配置して使用しても、良い効果を得る事ができます。」

 

サウンド作業中に、編集自体が修正される場合が多いはずですが、データの管理が非常に重要なポイントになりそうですね。

「映画の映像がオーディオ編集の作業中に修正されるということは多々ありますが、ミキシングの途中に変更されるケースは少ないです。それは、そのようなワークフローにしているからなのです。以前は映像編集が変更される度にいちいち手作業でオーディオも編集する必要がありました。今は編集室から届くEDLデータで、変更された部分を自動で適用させることができるので、本当楽になりました。結局メタデータをうまく活用するのが核心ポイントですが、Netflixの場合もこの重要性を認識しているので、現場で同時録音を開始するなかで生じるメタデータが後半作業の最後まで維持されるかについてのワークフローを徹底的に確認します。そのワークフローをすべて確認してから撮影に入ることができるのです。」

 

先ほど言及された作品の中にはアニメーションもあるし、SFもありますが、他の映画とはサウンドデザインの方向性がかなり違うのでは?

「サウンドデザインの方向性は確実に違いますね。例えば、アニメーションは現場の音が一切なく、すべてを新しく作らないといけないため、作業量としては実写映画の3~4倍程、手がかかります。しかし、ワールドワイド・リリースを考えるとアニメーションの方が楽ではありますね。
ダイアログを無くし、M&Eのみ分離させないといけないのですが、アニメーションは基本的にそれができているからです。しかし、実写映画は同時録音に入るサウンドが多いので、それをすべて分離することは容易ではありません。セリフを削除したら、消えた背景のサウンドをまた付けないといけないので、一長一短ありますね。」

 

大変な思いをしながらDolby Atmos作業を行っていますが、OTTの場合、消費者の視聴環境はステレオあるいはイヤフォン/ヘッドフォンが多いのが現実です。それについてどう思いますか?

「私も最初は “この(Dolby Atmos)作業の意味” について考えました。しかし、同じコンテンツを最初からステレオミキシングしたものとDolby Atmosで作業した後、それをステレオにダウンミキシングした成果物とは躍動感や立体感等にはっきりと差が出ます。Dolby Atmosの方が確実に現実的で、拡張された感じがしますね。ですので、意味がないとは思いません。もちろん、これからの道のりは長いです。TV環境でより格好よく聞こえるように作るのが課題です。『地獄が呼んでいる』 の場合は、ワールドワイド配給史上初のDolby Atmosフォーマットを維持することになります。今まではM&Eを配布する際、5.1chまでだったのです。ですので、Netflix鑑賞ポイントといえば、ステレオ視聴環境であっても、ステレオをベースにミキシングしたものとは確実に違うので、音の動きに注意しながら聴いてみるとより楽しめると思います。」

 

映画とOTTコンテンツは作業ポイントが違ってくると思いますが、いかがでしょうか?

「劇場は画面が大きいので、音が少し動くだけど確実に認識されますが、OTTコンテンツになると、TV環境ならまだ良い方で、タブレットかスマートフォンで観る場合もあるので、わざと強めのハードパンニングを行います。音の動きや空気感の表現を小さい画面とシステムでよりいい感じで聴けるようにするためです。」

Bluecap Soundworks Post Studio

Bluecap エフェクトチーム

  • キム・ウンジョン: リレコティングミキサーおよびエフェクトチーム長
  • キム・ヒョンジュン: エディターおよびフォーリーアーティスト
  • カン・ミンソク: エディター
  • ソン・ジョンウン: エディター

 

 

サウンドエフェクト作業について読者に向けて説明をお願いします。

キム・ウンジョン氏: 「映画の中でサウンドソースを映像に合わせて入れる作業等を言います。ドアの開閉音、爆弾が爆破される音、足音、水が流れる音等すべてです。夜、あるいは想像シーンに入るBGMであるとか、背景の音等も該当します。この過程でフォーリー録音という作業を行います。各種効果音をスタジオの中で録音する作業を言います。そうやって録音サウンドが作られたら、映像と合わせて作品として完成されるまでのパイプ的な役割を担っています。」

 

ものすごく想像力が豊かで、創造力が必要とされますね。

ソン・ジョンウン氏: 「創造力と想像力を豊かにするため努力しています。私だけではなく、みんなコンテンツが大好きなのです。日頃から映画をはじめ、映像作品をみながらアイデアを蓄積しておきます。音楽とは違ってリファレンスとなる何かがあるというよりかは、日頃から他の映像コンテンツを見ながら習得しています。」

 

Dolby Atmos環境が導入されてから変わったことはありますか?

キム・ウンジョン氏: 「なんといっても、上段レイヤーを使用してサウンドを配置できることですね。5.1chでも狭い感じがする時がありますが、Dolby Atmosはより自由な感じなので、音を配置することにおいての負担がありません。効果音の場合、後に上段チャンネルで、objectで表現しようと別途決めておくソースもあります。

このように最初からDolby Atmosを想定して作業を開始するのとは違って、5.1chで作業をしてからDolby Atmosで拡張すると、やはり物足りなさは感じますね。音響エンジニアって基本的にやりたいことがたくさんある人達じゃないですか。天井にスピーカーがあると思ったら、例えば、映像の上段に水道管が見えるシーンがあったとしたら、なんとしても水が流れる音でもつけたくなるので。」

 

映画とOTTは作業基準がかなり異なりますか?

カン・ミンソク氏: 「技術的には違うのが当然ですね。しかし、今までの映画ワークフローに慣れとているので、そのまま作業してしまいます。視聴環境面で映画のダイナミックレンジは家庭環境では消化されない場合もあるので、編集段階よりは、ミキシングおよびマスタリング段階で、ニアフィールドでモニタリングするのが映画と異なる点です。もちろん私たちもTV環境で視聴することを想像しながら作業を行います。
ドラマだから映画より何かを減らしたり、簡単に作業する」といった概念ではないのですが。実は、今までの作業は映画を撮っていた監督さん達がOTTコンテンツを作るケースだったので、作業プロセスが根本的に変わることはなかったです。」

 

『地獄が呼んでいる』 のサウンドはライブラリよりはフォーリーサウンドを多く使用されたのでしょうか?

キム・ヒョンジュン氏: 「実は 『地獄が呼んでいる』 の全6編はすべての音をフォーリー録音で具現化しました。Bluecapはフォーリー録音を好む会社でもありますし。フォーリーアーティストとして録音するということは俳優の動きに合わせて演技をするということです。例えば、2話の焼却場で生きたまま焼かれる殺人犯の場合、私はその音を表現するために鉄板の上に直接横たわり、火に焼かれている心情を想像しながら、身体を揺らしながら録音しました。私は俳優ではないのですが、演じるということですね。演技者の心で録音するといつもよりいい成果物が得られます。(笑)」

 

すべてをフォーリー録音で行うとファイルの管理が大変になりそうですね。

ソン・ジョンウン氏: 「実際にファイル数は数千個を超えます。編集もなかなか大変ですね。
ですので、フォルダ名やファイル名についてチーム内でルールを決めて徹底的に管理しています。
お互いに意思の疎通がうまくできていないと、必要なファイルを取り出して使うことはできません。バックアップを取っておくのは当たり前のことです。特にフォーリーサウンドは二度と同じ音を作ることが難しい、とても重要なソースなので、編集前の段階で必ずバックアップを取っておきます。」

フォーリー録音においてマイクはどのように使いますか?

カン・ミンソク氏: 「マイクはさまざまな機種を変えながら使います。状況に合わせて選択する必要がありますね。普通はソース・ピックアップ用マイクとアンビエンス・ピックアップ用の2つを使用し、低音が重要なソースの場合は低音ピックアップ用のマイクを別途使用します。」

 

話を聞いていると、フォーリー録音は低音を重要視するという印象を受けましたが、実際どうでしょうか?

キム・ヒョンジュン氏: 「はい。私はすごく重要だと思います。現実感と没入感を与えるにあたり、とても重要な要素だと思います。なので、低音が特別に重要なソースの場合、特にマイク・ピックアップの位置に注意しながら、録音過程の中で低音専用のマイクを別途追加することもあります。」

 

トラックの数もものすごく増えますね。

キム・ウンジョン氏: 「できる限り効率よく管理しようと努力しています。バウンシングをしていると種類が違うトラックが混ざる場合もあるので、注意を払って管理しないといけません。例えば、いい状況なら、風の音と鳥の音を別々のトラックで処理したりもしますが、最近のPro Toolsは2,048トラックまで可能になるので、以前よりは負担が減りました。」

 

ハリウッドの作業環境や成果物が常に憧れの対象でありましたが、今では国内の技術で制作された国内コンテンツが国内1位になったので、感慨深いのではと思いますが。

キム・ウンジョン氏 「私たちの世代はハリウッドのすべてが “Wanna be” でしたが、若いエンジニア達は “自分たちのもの” として受け取っているように思えますね。いい音について語る際も、“ハリウッドのようなサウンドを作ろう” ではない。小さい頃から自然にいい音を聴いて育ったので基準値が高いのだと思います。だから、高いレベルを当たり前と思っているし、また高い水準の作業をやり遂げます。また、コンテンツ自体がすごく好きで、そういう人達が音響エンジニアとして仕事をしているので、さらに素晴らしい成果物が作り出されるわけです。ハリウッドのサウンドは相変わらず素晴らしいし、学ぶべきことが多いのですが、私たちのサウンドがいいと感じる確かな理由があると思います。」

 

作業をしながら楽しかった事は?

キム・ヒョンジュン氏: 「最終回の赤ちゃんを守る夫婦の苦しむ姿を音で表現するために、相当な努力を重ねていたのを覚えています。互いの身体が離れないようホースで巻き付けて抱き合うシーンでしたが、私も同じような状況を演出しながら、泥だらけの地面を這いずり回りました。終わってみたら、自分の身体にホースが巻きつかれていました。自分なりに丁寧にサウンドを作ったので、多くの方が 『地獄が呼んでいる』 を見て楽しんでくださったことで、やりがいを感じます。」

Bluecap Soundworks Post Studio

キム・ソクウォン 代表

韓国映画ポストサウンド・プロダクションの初期の頃から現在に至るまで、現業に従事されていますが、最近の変化についてどのように受け取っていらっしゃるのか、感想をお聞かせください。

「私が最初この業界で仕事を始めた頃はDolby Surroundといって、LCRにチャンネル一つのサラウンドを足すといった、全部で4トラックのフォーマットが主流でした。後にDolby Digitalが導入され、当時韓国ではマスタリングもできなかったので、わざわざアメリカに行かざるを得なかった時代もありました。Dolby Atmosが最近話題になっていますが、私たちはすでに7~8年前から成果物を作り出していました。当時は他にもさまざまな競争技術がありましたが、大勢を占めるようになったのは結局Dolby Atmosになりましたね。

フォーマットの優秀性のみならず、現場の支援、配布フラットフォームの構築、顧客サービスがとても重要な部分だと感じます。最近の変化といえば、OTT市場の拡大といわれていますが、実は私たちの立場からみたら、さほど大きな変化ではないと思います。OTT市場が拡大されたといっても、それはコロナパンデミックの影響で、またその影響で映画市場が縮小されたので、結局私たちの立場で受注する仕事量はほぼ同じであると言えます。

それでも、まったく変化がないわけではなく、シネマ上映環境ではない、TV視聴環境を考慮する必要があります。でも、それは発展とは言い難いですね。なぜならば、TV環境は基本的にダイナミックレンジを小さく使うしかなくて、また大半の視聴環境といえば、良い方だとステレオやサウンドバー、せいぜいTVに内蔵されたスピーカー程度であるのが現実なのです。

映画ではディテールな表現が可能なことが、OTTコンテンツでは物足りない表現に留まるしかない事もあります。ですので、私たちは映画市場がまた甦ることを願っています。その一方で、OTT環境、すなわちTVやタブレット視聴環境でのより良いサウンド体験を提供できる方法についても悩んでいます。正直、当社は長いこと映画に携わってきたので、今はどんなプラットフォームであっても映画の作業と同じ方式で最大限ディテールに作業しています。TVという配布プラットフォームを考えると、ある意味やり過ぎ感もありますが、結局クオリティが高くなるわけなので、メリットはありますね。」

 

Bluecapの成果物が常に優秀な水準を維持している秘訣はありますか?

「当社の他とは違う点は各チーム長とチームメンバーに仕事を任せて、責任をもってもらうという点でしょうか。ファイナルミキシングをする際、今インタビューをしているこのミキシング部屋にすべての成果物が集まるのですが、ここで再度ソースに手を加えて編集することはなるべくしないようにしています。

チーム単位で自分のパートを完成させるということですね。どういうことかと言いますと、セリフを担当する人はそれが最終的な成果物と見なし、最後まで責任を持って音をつけるし、エフェクトチームもフォーリーチームも同じですね。ファイナルミックス作業時には無数の音があるので、いちいち音を見直す余裕もありません。

ですので、みんなが責任をもって仕事をしています。メリットは音のディテールがすごいことになる、強いてデメリットを言うならば、やりすぎる傾向があるってことでしょうか。もちろん、ビックピクチャー、要するに重要な要素についてはあらかじめ指針を伝えておきますが、いちいち画面を見ながら説明をしないということです。まずは “良い音” について私と従業員たちが概念を共有し、常に徒弟制というかチームメンバーがチーム長を教えたり、先輩・後輩が互いに学ぶという雰囲気なのです。そういう環境を作ってあげると大体良い結果が出ますね。このように基本的な期待値を上げて作業を進めると監督さん達はみんな気に入ってくれます。

我がBluecapは “私たちが好きなら、誰もが好きになるはず」といった自信を持っています。私はいつも “君たちが好きなように、気に入るものを作ればいい” とスタッフたちに言っています。そうすると、スタッフの実力の伸びが早くなるというメリットがあります。それがBluecap全体の競争力にも繋がるわけです。」

Dolby Atmosは確実に既存のサラウンドに比べ、メリットが多いですか?

「確実に違うと思います。Objectを基盤としているというのも違う概念ですし、実際に私たちは以前IOSONOについて沢山の経験値を持っているので、違和感はないですね。Pro Toolsと Dolby Atmosの組み合わせは作業するにあたり、とても便利で、クオリティの高い成果物も得られます。

セッション管理やリコールが便利ですし、また成果物の中で立体感を伝えるためには十分なツールが揃っていると思います。作業量だけでみると、イマーシブ・サウンドはサラウンドに比べ、時間と努力がたくさん必要なのは事実です。きちんと作らないと逆に散漫な感じになるので、より多く手をかけないといけません。こういう状況なので、現実的にもっと予算を編成しないといけないのですが、その代わりに監督や観客の誰もが納得する、本当に “おお~” という感嘆詞が自然と出るくらいのクオリティで作らなければならないと思っています。

もちろん、私たちがうまくやらないといけないのですが、現場での条件も重要です。これまでの劇場の場合、5.1chシステムの調整がきちんと行われていなかった場合が多かったのです。Dolby Atmosはより精巧な調整が必要となります。みんなで一生懸命素晴らしい成果物を作り、それを大勢の人々が楽しんで、また市場もより大きくなるといいですね。」

 

『地獄が呼んでいる』 の作業をして大変だったことや、何かエピソード等ありましたか?

「セリフの編集がすごく大変でした。映画はセリフのみ出るチャンネルと音楽チャンネルが別々に区分されていたので、そこまで負担ではなかったのですが、Netflixはほとんどのコンテンツ消費者がTV環境にてステレオで楽しむので、LRチャンネルでもセリフ、音楽、効果、アンビエンス、メッセージがきちんと伝わるためには鮮明度、ソースを見分ける力がすごく重要になってくると思いました。

とはいっても、全体の時間を考慮すると、映画より予算もタイトなので同時録音に多く投資するわけにもいかない状況でしたね。なので、私は “他の音は全部後で作るので、セリフだけはきれいに拾って来い” と何度もお願いしました。

でも、撮影環境がそこまで理想的ではないので。最近はワイヤレス・マイクをよく使うのです。そうなると距離感とか俳優の声の強弱がかなり希釈されるので、演技が多少平面的に感じられてしまいます。

ですので、私はブーム・マイクが多く使われるのを好みますが、ソースをもらってみたらほとんどがワイヤレス・マイクで拾ったものでした。助演俳優たちのみブーム・マイクで拾ったのですが、2~3名が重なっている場合が常だったし、特に “チョン・ジンス会長” の場合は低い声で演技をするので、もっと厳しい状況でした。通常、ノイズリダクションを2~3回行えば、問題なくなるのですが、『地獄が呼んでいる』 はより多くの修正が必要でした。本当に大変だったんです。でも、あとで考えたら “劇場システムで上映されるものでもないので、ここまでやる必要があるのかな” という思いもしました。

もちろん、そこまでやったのである程度満足いくような成果物を出せたわけですが。そのためにはすべての効果音を100%フォーリーで処理しなければなりませんでした。フォーリーサウンドが増えるにつれてやや “ウソっぽい” 音になりかねないので、そういうのを全部整えたり、残響も異なる設定をする必要がありました。

もうひとつ大変だったことは、映画に比べて長いということですね。映画は通常20分単位で切ってから作業します。

昔、フィルムで作業していた頃の伝統が残っているわけですが、20分ずつ切って “1ロール” と表現します。なので、通常は5-6ロールあれば、一つの映画作業が終わることになります。最初 “6ロール” と言われたので、“あ、映画と同じくらいだな” と思っていたのに、もらってみたら1ロールが45~50分くらいあったのです。最初はそこまで大変ではなかったのですが、だんだん長くなりまして。

作業している時は “これくらいやれば終わるだろう” と思ったのに、確認してみたら半分しか仕上がってなかったという感覚ですね。だから体力的にも疲れて大変だった記憶があります。それでもNetflix全世界1位という実績を達成し、成果物としても私たちが納得出来るクオリティで仕上がったので、とてもやりがいを感じました。」

Pro Toolsで成功する

業界トップのツールを使って、サウンドをパワーアップ。映画/テレビ用の音楽やサウンドの制作から、世界中のアーティスト、プロデューサー、ミキサーとのコラボレーションまで自由自在。

Creating the digital audio and video technology used to make the most listened to, most watched and most loved media in the world.